ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜

 冬真の魔法は、例えば蓮の火炎魔法や瑚太郎の水魔法のように、直接攻撃が可能なものではない。

 うららに殺らせることも出来るが、魔法の譲渡は不可能だ。

 冬真が硬直魔法を得たいのなら、冬真本人が魔法で琴音を殺害する必要がある。────と、思わせることが出来た。

「……なら」

 先に衝撃から立ち直った律が、くるりと祈祷師の方を向いた。

自殺(、、)の場合はどうなる?」

 冬真に操られるか、律に記憶を書き換えられ、自殺するよう仕向けられたら────。琴音はひやりとした。

 祈祷師は顎に手を当てる。

「ザンネンだけど自殺じゃ魔法は奪えないんよね〜。魔法で殺すしかない。ま、唯一の例外がそこにいるウララたんの磁力魔法だけど……硬直魔法を奪いたいのはトーマっちだもんね?」

 ほっと安堵すると同時に、訝しむ気持ちが膨らむ。

 この男は何者なのだろう。紗夜たちですら知らないルールまで把握している。

「……っ」

 冬真は苛立ったように自身の髪を掻き混ぜ、ナイフを投げ捨てた。

 琴音の思惑通り、何とか死の危機は免れたようだ。

「如月……」

 律の顔に狼狽の色が滲む。予想外の展開に、彼もどうすればいいのか行動を決めかねているようだ。

 ただ一人、祈祷師は「ふふふ」と愉快そうに笑っている。一歩踏み出した。

「トーマっちが戦意喪失しちゃったんで、代わりにボクが殺るね。ボクはキミから魔法を奪えないし、キミもボクから魔法を奪えない。だからボクはキミがどんな魔法を持ってようがカンケーなーし!」

 祈祷師はそう言うと、手の内に雷を蓄えた。バチバチと青白い電光が徐々に大きくなる。

 琴音は、はっとした。あれは────。

「どーやら、この魔法に思い入れがあるみたいだからね……。これで殺ってあげるよ」

 琴音の表情の変化を見やった祈祷師は、興がるように笑みを深めた。

 そのまま琴音を目掛け、雷撃を放つ。

 琴音はほとんど反射で飛び退き、彼の攻撃を避けた。シュウゥ……、と黒く染まった地面から煙が上る。

「あちゃー、もう動けるか。二十秒って短いなぁ。そんじゃ、もう一回────」

 硬直か雷撃か、再び何らかの魔法を繰り出そうとした祈祷師の腕を、冬真はガッと掴んで制した。

 鋭い視線で祈祷師を睨みつける。声が出ないため言葉は無いが、言わんとすることは理解出来た。

 “硬直魔法は僕のものだ、僕が殺す”。
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