ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
大雅は呼びかけたが、間もなくテレパシーが切断された。
どさ、と琴音はその場に倒れる。即死だった。
額に空いた穴から、思い出したようにどくどくと血があふれ出す。床に血溜まりが広がっていく。
「おい、お前!」
追いついた律が咎めるように祈祷師を呼ぶ。
冬真は慌てて屈み、琴音の息を確認した。その死を悟ると、怒りを顕に立ち上がる。
祈祷師の胸ぐらを勢いよく掴んだ。
「なーに? お望み通り消してあげたじゃんか」
祈祷師は涼しい顔で言う。
それはそうだが、冬真が殺さなければ意味がないのだ。これで、硬直魔法も奪えなくなった……。
絶望と憤りを見せる冬真を眺め、祈祷師は面白がるような笑みを浮かべた。
「まさかトーマっちともあろう者が、コトネンのはったりに踊らされてたりしてー!」
冬真は困惑しながら、祈祷師を離した。律も戸惑う。
「はったりだと……?」
「え、二人とも本気でコトネンが硬直魔法持ってると思ってたの? ありゃー……案外ピュアなんだね、ぷぷぷ」
祈祷師は煽るように馬鹿にした。
しかし、困惑が勝り、その態度にいちいち腹を立てる余裕はなかった。
「持ってたらとっくに使ってるって。ここで明かした後は、使えない理由がないんだからさ」
確かにその通りだ。
冬真に狙われないよう、硬直魔法を持っていることを隠していたのだとしても、冬真本人に明かした以上、使わない理由がない。
────何より祈祷師はじめ運営側は、全員の魔法を把握しているのだが。
「…………」
冬真は項垂れる。……やられた。
だったら、別に魔法で殺さずともよかったのだ。最初にナイフで刺していれば。
とはいえ、硬直魔法を持っていないのなら、冬真が殺す必要もなかった。やっと、厄介な女が死んでくれた。
普段の調子を取り戻した冬真は、その事実を噛み締めほくそ笑む。
「……この場合、こいつの魔法はどうなる?」
律は祈祷師に尋ねた。
「魔法は奪えない、と言っていたが」
「コトネンの持ってた瞬間移動魔法は、即座に“天界”へ還るよ。天界っていうか、ボクらのリーダーの元へ」
祈祷師は答えつつ、倒れた琴音の傍らに腰を下ろし胡座をかいた。
「その他にもー、魔術師が死んでから魔法を奪われることなく五分経過したときとか、さっき言ってたように自殺したときにも、おんなじように魔法は還ってく」
「……天界? リーダーとは誰だ?」
「はいはい、質問タイム終わりー」
聞き慣れない言葉や新たに判明した事実に、さらなる疑問が募ったが、祈祷師に答える気はないようだ。
「そんじゃ、この死体どうする? 欲しいならあげるけど」
「誰がいるか。魔法も奪えないんだろ」
祈祷師の話からして、琴音の魔法は既に天界とやらへ還った後なのだろう。
「敵の抜け殻なんて見たくもない」
「じゃ、せめてこれあげるよ」