ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
「汚ぇ奴……」
「あたしは機会を与えてんだ。貶される筋合いはないね」
その気になれば魔法で瞬殺出来る、とでも言いたげだった。物理攻撃は温情なのかもしれない。
「そうだねぇ……。まず、プレイヤーの対象についてはダイスで決めた。あんたらは運がいい」
「ダイス? んな適当なもんで────」
「これはゲームなんだ。公平に楽しくいかないとね」
その結果、高校生という肩書きを持つ人たちが巻き込まれたというわけだ。
会話の流れから嫌でも察する。呪術師は、運営側の一員だ。
自分たちが倒すべき相手の一人。そう認識した途端、急激に自信がなくなっていく。果たして、こんな連中に敵うのだろうか……?
今、既に殺されかけているのに。抗うことは現実的なのだろうか。
疼いた脇腹の傷が、蓮の体力を削っていく。
「ついでに教えてやろう。代償について」
ガチャにおける魔法会得の話だろう。
呪術師は扇子を仰ぎ、風を起こした。斬撃が飛んでくる。
蓮は足を引きずっても、俊敏な動きなど出来なかった。
しかし、あえて急所から逸らしたように、腕や肩、脚、頬が切られる。
「く……っ」
「代償もダイスで決まってるんだ。臓器ならどの臓器か、寿命や記憶なら何年分か。当然、出目は六以上あるがね」
蓮の苦痛など構わず、呪術師は説明した。もともとそういう約束だが、何とも無慈悲だ。
「あぁ、そうそう。代償の選択肢の四つ目はね、あたしらに完全に委ねるって意味だ。一から三に含まれるものは勿論、それ以外も代償の候補になる」
臓器や四肢などを失う可能性もあり、また、それらに含まれない寿命や記憶を奪われる可能性もあるということだろう。
最も“賭け”のような選択肢に思えた。運が良ければ、その他三つの選択肢より軽い代償で済むが、悪ければ即死だ。
「……で、お前らの目的は……?」
荒い呼吸を繰り返しながら、絞り出すように尋ねる。
何故、運営側が自分たちを狙うのか。何故、こんなくだらないゲームを仕組んだのか。
呪術師の赤い唇が弧を描いた。彼女が手を翳すと、蓮の胴や両足が蔦で拘束される。
慌てて燃やそうとしたが、それを阻むように水が放たれた。
液体なのに空中でも形を保ったままの水は、蓮の鼻と口を覆うようにまとわりつく。
「……!!」
息が出来ない。苦しい。
もがいても枷のような蔦や水は外れず、酸素にありつけない。
「目的ね……。それは、最後の生き残りになったら教えてあげよう」
呪術師はゆったりと蓮に歩み寄った。
蓮の全身に刻まれた傷から、血が滴り落ちる。
だんだんと色を失っていく彼の顔を見やり、そっと顎を掬い上げた。
「尤も────あんたはここでゲームオーバーだけどね」
呪術師の右手が、勢いよく蓮の身体を貫いた。