ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
第三章 -失われた光-
第13話 11月20日
* * *
廃トンネルには五人の人影があった。奏汰、大雅、瑚太郎、アリス、そして蓮は学校を抜け出し集っていた。一様に表情は暗い。
「今朝のホームルームで、陽斗と昨日の夕方から連絡が取れないって、担任が……」
瑚太郎の言葉に「あぁ」と大雅は頭を擡げる。
「陽斗は殺された。……たぶん、祈祷師かその仲間に」
テレパシーを繋いでいない彼には、その事実を今初めて告げることとなった。
瑚太郎は衝撃を受けたように瞠目し、ゆらゆらと揺れる瞳を伏せた。悲しみも追いつかない。
「うちの担任も、瑠奈は相変わらずやし、琴音まで行方不明言うてたなぁ」
アリスは顎に手を当てつつ言った。
瑠奈は依然として安否も居場所も分からない。琴音は既に亡くなっている。
それどころか────。
「……小春は?」
今日は小春の姿まで見えない。大方、事情を把握しているであろう、と踏んで蓮に尋ねたが、彼は蒼白な顔で俯くだけだった。
「分かんないんだって。連絡も取れない」
代わりに奏汰が答える。
「昨日の帰りは一緒じゃなかったのか?」
「……途中までな。踏切で分断されて、電車が通過したらいなくなってた。捜し回ったけど、見つかんなかった」
────彼女の家を訪ねても、いなかった。
出迎えてくれた小春の母親に、小春からだというメッセージを見せられた。
“数日友だちの家に泊まってくる”という内容で、時刻は十八時三十四分。
それ以降は何の音沙汰もない。訝しげな小春の行動に嫌な予感を覚えた蓮だが、電話をかけてもメッセージを送っても、一向に応答はなかった。
瑠奈に続き、小春までもが消息を絶ってしまったのだ。
答えた蓮は大雅に向き直る。縋るような眼差しを向けた。
「なぁ、テレパシーは? 繋がってるか?」
「それが……」
大雅は難しい表情を浮かべる。
小春とのテレパシーは、少し妙な状態だった。
「繋がってると言えば繋がってる。……けど、なんつーか変な感じなんだ。互いに声が届かねぇ」
「どういうことだよ?」
「俺にも分かんねぇ。こんなの初めてだ」
ゲームなどで例えれば、小春はまさしく“オフライン”のような状態になっているのだ。テレパシー自体の切断はされていない。それでも、声が届かない。
今まで、“切断”か“繋がっている”かの二択しかなかったのに、何が起こっているのだろう。
「……消えたってことは、瞬間移動させられたのかも」
「だとしたら、相手は祈祷師と如月くんかな」
瑚太郎の推測に、奏汰は言った。冬真にそんな能力はないため、彼が関与しているのなら、自ずと祈祷師も付随してくる。
祈祷師の独断か、冬真への協力か、により意味合いが変わるという話だ。
────冬真の“琴音殺害”に協力した祈祷師。彼はただ者ではない。聞く限り、ありとあらゆる魔法を扱うことが出来る。
それほど強力な彼が、何故冬真に手を貸しているのだろう。