ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
「……確かめられねぇ」
大雅は端的に答えた。
先ほども言ったように、小春自身とはテレパシーが繋がらない。
また、冬真や律に尋ねたとして、彼らが正直に答えるはずもない。
唯一、情報源となってくれるはずのうららだが、行動を制御されているらしく、テレパシーへの応答がなかった。
「あーもう!」
蓮は乱暴に髪を掻き混ぜた。無力感や喪失感から募る苛立ちが爆発する。
「こうなったら、うらら奪還の名目で冬真たちのとこ乗り込もうぜ。そこに小春がいたら、取り返して冬真を殺す。敵が減るんだから、それでいいだろ」
立ち上がり、一気に捲し立てた。大雅はそんな彼を見上げ、宥めるように言う。
「冷静になれよ。それで小春が喜ぶと思うか?」
大雅は何も、積極的に“殺し”を肯定していきたいわけではないのだ。
反駁を受けた蓮は一度目を閉じ、鬱陶しそうにため息をついた。
「……小春は優し過ぎんだよ。誰も殺さず、誰も傷つけなかった結果がこれだろ。それじゃ何も守れねぇんだよ」
悔しそうに眉を寄せ、拳を握り締めた。
いつだってそうだ。世の中は残酷で、真っ当に生きている優しい善人ばかりが損をする。
「小春のことも守れなかった。“今まで通り”じゃ駄目なんだよ。取り返すことも出来ねぇ」
彼女を信じ、その選択を支持してきた。だが、誰のことも傷つけない、というのは甘過ぎた。そこに付け込まれたのだ。
ならば、残忍になるしかない。邪魔をするなら、誰であろうと殺せばいい。
それほどの気概を見せなければ、冷酷な現実に易々と牙を剥かれてしまう。……それがよく、分かった。
「取り返すって、生きとるかも分からんのに……」
「何だと!?」
ぽつりと無神経に呟いたアリスに、蓮は掴みかからん勢いだった。奏汰が何とか押しとどめる。
深く息をついた。やるせない思いを吐き出すように。
「生きてる。絶対、生きてる……」
ただ呪文のように蓮は繰り返した。自分に言い聞かせるように。
そう信じられなくなったときが、一番怖い。
『────ねぇ、大雅。ちょっと僕の話を聞いてくれないか』
突如として、大雅の頭の中に忌々しい冬真の声が響いてきた。
いっそのこと無視してやりたかったが、無下にすれば、うららの安全が脅かされかねない。
嫌々ながら、顳顬に人差し指を添える。
(……何だよ?)
『君たちに提案がある。僕らと取り引きしよう』
“取り引き”など、どう考えてもいい響きではない。
大雅は不信感と警戒を強める。
もったいつけるように一拍置いた冬真が、ついに本題へと切り込んだ。
『百合園うららと大雅、君たちを交換したい』