ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
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「何故、あの場でムカイレンを殺さなかったんだい?」

 呪術師は鋭く祈祷師に尋ねる。

 踏切で相見えたにも関わらず、彼は蓮を殺すことなく天界へと帰還した。

「ボクの狙いはミナセコハルだったからねー。そのカノジョがいなくなっちゃったから退散しただけ」

 昨日、祈祷師は蓮と小春のいる踏切へ向かった。確かに小春の姿はあったはずだった。

 しかし、着いた頃には彼女だけがいなくなっていた(、、、、、、、、、、、、、)

 突然一人になり戸惑う蓮を見ながら、自分も困惑したものだ。

 祈祷師からの襲撃を、まるで予知していたかのように隠れたようだった。

「じゃあ今からでもムカイを殺して来たらどうだい? あたしや霊媒師も他の連中を殺りに行くから」

「……いや、待て」

 制止したのは陰陽師だった。呪術師は意外そうに彼を見やる。

「最早、その必要はなくなった」

「……あぁー、そうだね。コハルが消えたお陰で、あいつらがゲームに支障を来すこともなくなったはず」

 霊媒師が補足するように言った。

 幸か不幸か、小春の仲間たちは、彼女がいなくなったお陰で救われたとも言える。

「あれれ、霊ちゃん。機嫌直ったの?」

 祈祷師はからかうように首を傾げた。

 霊媒師はばつが悪そうに、昨日傷を負った部分に触れる。今はすっかり癒えているが。

「うっさいなぁ。……あのチビ、どうせ勝てないくせに生意気なのよ」

 悪態をついた霊媒師に、祈祷師はけらけらと笑った。

「何よ」

「いやいや。そんなに見下してるケド、しっかり攻撃食らってんじゃん」

「し、しょうがないでしょ! いくら私たちでも、下界(した)に降りたら魔法効いちゃうんだから。そこでは私たちも、あいつらと同じようなものなんだもん」

 必死で弁解した霊媒師だったが、呪術師は「はいはい」と小さく笑った。

「言い訳は充分。認めることだね、あの子もそれなりに強かったんだよ」

 正確には、陽斗が特別強かったというより、この中でも霊媒師が最弱であることに起因するのだろう。

 同じ天界の面々、運営側の面々とはいえ、その実力には差があるのだ。

 際限なく異能を操れる陰陽師がトップであることは無論、次点は祈祷師といったところだろう。

 当の本人は、ふあ、と大きくあくびをすると、頭の後ろで手を組んだ。

「とりあえず……ボクたちはまたしばらくオブザーバーだね。ミナセコハルはとんだバグ(、、)だったなぁ」

 霊媒師は頬杖をつき、唇の両端を持ち上げる。

「ムカつくけどやっぱり面白いな、人間って。十二月四日まで、まだまだ楽しめそう」
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