ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
*
「何故、あの場でムカイレンを殺さなかったんだい?」
呪術師は鋭く祈祷師に尋ねる。
踏切で相見えたにも関わらず、彼は蓮を殺すことなく天界へと帰還した。
「ボクの狙いはミナセコハルだったからねー。そのカノジョがいなくなっちゃったから退散しただけ」
昨日、祈祷師は蓮と小春のいる踏切へ向かった。確かに小春の姿はあったはずだった。
しかし、着いた頃には彼女だけがいなくなっていた。
突然一人になり戸惑う蓮を見ながら、自分も困惑したものだ。
祈祷師からの襲撃を、まるで予知していたかのように隠れたようだった。
「じゃあ今からでもムカイを殺して来たらどうだい? あたしや霊媒師も他の連中を殺りに行くから」
「……いや、待て」
制止したのは陰陽師だった。呪術師は意外そうに彼を見やる。
「最早、その必要はなくなった」
「……あぁー、そうだね。コハルが消えたお陰で、あいつらがゲームに支障を来すこともなくなったはず」
霊媒師が補足するように言った。
幸か不幸か、小春の仲間たちは、彼女がいなくなったお陰で救われたとも言える。
「あれれ、霊ちゃん。機嫌直ったの?」
祈祷師はからかうように首を傾げた。
霊媒師はばつが悪そうに、昨日傷を負った部分に触れる。今はすっかり癒えているが。
「うっさいなぁ。……あのチビ、どうせ勝てないくせに生意気なのよ」
悪態をついた霊媒師に、祈祷師はけらけらと笑った。
「何よ」
「いやいや。そんなに見下してるケド、しっかり攻撃食らってんじゃん」
「し、しょうがないでしょ! いくら私たちでも、下界に降りたら魔法効いちゃうんだから。そこでは私たちも、あいつらと同じようなものなんだもん」
必死で弁解した霊媒師だったが、呪術師は「はいはい」と小さく笑った。
「言い訳は充分。認めることだね、あの子もそれなりに強かったんだよ」
正確には、陽斗が特別強かったというより、この中でも霊媒師が最弱であることに起因するのだろう。
同じ天界の面々、運営側の面々とはいえ、その実力には差があるのだ。
際限なく異能を操れる陰陽師がトップであることは無論、次点は祈祷師といったところだろう。
当の本人は、ふあ、と大きくあくびをすると、頭の後ろで手を組んだ。
「とりあえず……ボクたちはまたしばらくオブザーバーだね。ミナセコハルはとんだバグだったなぁ」
霊媒師は頬杖をつき、唇の両端を持ち上げる。
「ムカつくけどやっぱり面白いな、人間って。十二月四日まで、まだまだ楽しめそう」
「何故、あの場でムカイレンを殺さなかったんだい?」
呪術師は鋭く祈祷師に尋ねる。
踏切で相見えたにも関わらず、彼は蓮を殺すことなく天界へと帰還した。
「ボクの狙いはミナセコハルだったからねー。そのカノジョがいなくなっちゃったから退散しただけ」
昨日、祈祷師は蓮と小春のいる踏切へ向かった。確かに小春の姿はあったはずだった。
しかし、着いた頃には彼女だけがいなくなっていた。
突然一人になり戸惑う蓮を見ながら、自分も困惑したものだ。
祈祷師からの襲撃を、まるで予知していたかのように隠れたようだった。
「じゃあ今からでもムカイを殺して来たらどうだい? あたしや霊媒師も他の連中を殺りに行くから」
「……いや、待て」
制止したのは陰陽師だった。呪術師は意外そうに彼を見やる。
「最早、その必要はなくなった」
「……あぁー、そうだね。コハルが消えたお陰で、あいつらがゲームに支障を来すこともなくなったはず」
霊媒師が補足するように言った。
幸か不幸か、小春の仲間たちは、彼女がいなくなったお陰で救われたとも言える。
「あれれ、霊ちゃん。機嫌直ったの?」
祈祷師はからかうように首を傾げた。
霊媒師はばつが悪そうに、昨日傷を負った部分に触れる。今はすっかり癒えているが。
「うっさいなぁ。……あのチビ、どうせ勝てないくせに生意気なのよ」
悪態をついた霊媒師に、祈祷師はけらけらと笑った。
「何よ」
「いやいや。そんなに見下してるケド、しっかり攻撃食らってんじゃん」
「し、しょうがないでしょ! いくら私たちでも、下界に降りたら魔法効いちゃうんだから。そこでは私たちも、あいつらと同じようなものなんだもん」
必死で弁解した霊媒師だったが、呪術師は「はいはい」と小さく笑った。
「言い訳は充分。認めることだね、あの子もそれなりに強かったんだよ」
正確には、陽斗が特別強かったというより、この中でも霊媒師が最弱であることに起因するのだろう。
同じ天界の面々、運営側の面々とはいえ、その実力には差があるのだ。
際限なく異能を操れる陰陽師がトップであることは無論、次点は祈祷師といったところだろう。
当の本人は、ふあ、と大きくあくびをすると、頭の後ろで手を組んだ。
「とりあえず……ボクたちはまたしばらくオブザーバーだね。ミナセコハルはとんだバグだったなぁ」
霊媒師は頬杖をつき、唇の両端を持ち上げる。
「ムカつくけどやっぱり面白いな、人間って。十二月四日まで、まだまだ楽しめそう」