ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
*
学校を抜け出した冬真と律は、人質のうららを連れ、あてどもなく歩いていた。
うららの記憶は操作されていないが、絶対服従の術にはかかっていた。
その命令によらずとも、下手に刺激して事態が悪化しても困るため、うららは抵抗せず甘んじることにした。
現状、拘束はされていないが、逃げられない状態だった。発言は出来るが、顳顬には触れられない。
「…………」
琴音が死んだことで、冬真に小春たちをつけ狙う理由はなくなった。しかし、大雅の存在は欲しかった。
相変わらず硬直魔法は得られていないし、今は単に空間操作系の魔術師を一人潰しただけに過ぎない。
瞬間移動よりもっと強力な時間操作系────具体的には“時間停止”や“時間逆行”といった能力があるはずだ────の方が厄介だった。
冬真の魔法は時間に依存するからだ。彼らもしくは彼女らを倒さないことには、いくらでも防がれる。
その目的を果たすためには、大雅の協力が不可欠だった。
彼を連れ戻し、ひとまず二、三年の魔術師リストを完成させなければ。
「ねぇ。あなたたちは随分と仲がよろしいみたいだけれど、最後はどうなさるの?」
ふと、うららは疑問をぶつけた。
このゲームはバトルロワイヤルだ。最後に生き残れるのは一人だけ。
「……俺は、唯一の生存者になる気はない」
律が答える。
「こんな馬鹿げた事態に巻き込まれて迷惑してるんだ。連中に生かされるのは癪だから、その前に死んでやる」
「……それは、如月さんのため?」
うららは思わずそう尋ねた。
運営側へのせめてもの抵抗、と口では言っているが、冬真の野望を叶えるために、自ら犠牲になるつもりなのではないだろうか。
冬真は逆に、何がなんでも唯一の生存者になることを狙っているのだから。
「さぁな」
否定でも肯定でもない、曖昧な返答に真意はぼかされた。
「まぁ、俺は……基本的に誰も信用していないし、仲間なんかいらない。これだけは言える」
少し意外ではあった。誰より冬真に忠実であるように思えたが、その根底にあるのは、仲間意識ではなかったようだ。
冬真は特に気を悪くした様子もない。承知の上なのだろう。
「でしたら、どうして如月さんと?」
「如月は仲間じゃない。ただ手を組んでいるだけだ。だから、互いに依存することもない。死ねばそこまでの関係だ。お前もそのつもりだろ?」
確かめるように、律は冬真に尋ねる。
冬真はただ、微笑みを返した。
「案外ドライですのね。……ま、わたくしたちも似たようなものですけれど」
紗夜のことを思う。行動をともにしてきたが、仲間という形態とは少し違っていた。同志や戦友と言った方がそぐう。
ふと、うららは閃いた。
「そうだ、その延長で水無瀬さんたちと同盟を結ぶことは出来ませんの?」
学校を抜け出した冬真と律は、人質のうららを連れ、あてどもなく歩いていた。
うららの記憶は操作されていないが、絶対服従の術にはかかっていた。
その命令によらずとも、下手に刺激して事態が悪化しても困るため、うららは抵抗せず甘んじることにした。
現状、拘束はされていないが、逃げられない状態だった。発言は出来るが、顳顬には触れられない。
「…………」
琴音が死んだことで、冬真に小春たちをつけ狙う理由はなくなった。しかし、大雅の存在は欲しかった。
相変わらず硬直魔法は得られていないし、今は単に空間操作系の魔術師を一人潰しただけに過ぎない。
瞬間移動よりもっと強力な時間操作系────具体的には“時間停止”や“時間逆行”といった能力があるはずだ────の方が厄介だった。
冬真の魔法は時間に依存するからだ。彼らもしくは彼女らを倒さないことには、いくらでも防がれる。
その目的を果たすためには、大雅の協力が不可欠だった。
彼を連れ戻し、ひとまず二、三年の魔術師リストを完成させなければ。
「ねぇ。あなたたちは随分と仲がよろしいみたいだけれど、最後はどうなさるの?」
ふと、うららは疑問をぶつけた。
このゲームはバトルロワイヤルだ。最後に生き残れるのは一人だけ。
「……俺は、唯一の生存者になる気はない」
律が答える。
「こんな馬鹿げた事態に巻き込まれて迷惑してるんだ。連中に生かされるのは癪だから、その前に死んでやる」
「……それは、如月さんのため?」
うららは思わずそう尋ねた。
運営側へのせめてもの抵抗、と口では言っているが、冬真の野望を叶えるために、自ら犠牲になるつもりなのではないだろうか。
冬真は逆に、何がなんでも唯一の生存者になることを狙っているのだから。
「さぁな」
否定でも肯定でもない、曖昧な返答に真意はぼかされた。
「まぁ、俺は……基本的に誰も信用していないし、仲間なんかいらない。これだけは言える」
少し意外ではあった。誰より冬真に忠実であるように思えたが、その根底にあるのは、仲間意識ではなかったようだ。
冬真は特に気を悪くした様子もない。承知の上なのだろう。
「でしたら、どうして如月さんと?」
「如月は仲間じゃない。ただ手を組んでいるだけだ。だから、互いに依存することもない。死ねばそこまでの関係だ。お前もそのつもりだろ?」
確かめるように、律は冬真に尋ねる。
冬真はただ、微笑みを返した。
「案外ドライですのね。……ま、わたくしたちも似たようなものですけれど」
紗夜のことを思う。行動をともにしてきたが、仲間という形態とは少し違っていた。同志や戦友と言った方がそぐう。
ふと、うららは閃いた。
「そうだ、その延長で水無瀬さんたちと同盟を結ぶことは出来ませんの?」