ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜

「そんなことしとらんと、素直にガチャ回せばええのに」

「そんな簡単に出来ることじゃねぇだろ……」

 ぼやくアリスに蓮は言い返した。

 ガチャを回せば何を失うか分からない。もしかしたら、次の代償は命かもしれない。

「磁力魔法って、退けることも出来るんだよね。それで譲渡っていうか、返却っていうか……出来ないの?」

「無理よ……」

 瑚太郎が言うと、紗夜はきっぱり断言した。

「ルールノート、見せたでしょ? “如何なる場合も魔法の譲渡は不可”。……とっくに試したわ」

「そっか。じゃあ本当に結城さんには、うららちゃんの魔法を奪還する方法がないんだ」

 奏汰は数度頷く。

 アリスの言うように、依織が覚悟を決めてガチャ回せば、一応可能性はなきにしもあらずだ。そうして会得した魔法でうららを殺せば、取り返すことが出来る。

「心苦しいですわ、皆さまに迷惑をかけてしまって。ごめんなさい」

「自分を守っただけやろ。あんたは何も悪くない」

 しかし、厄介な敵が増えたものだ。当面警戒すべきは、祈祷師、ヨル、結城依織だ。

 至とその仲間の魔術師も含まれるだろうか? 二人は敵か味方か分からない。

 ────自分たちは、何をすればいいのだろう。

 運営側の情報を掴む。小春を捜す。その敵たちを倒す。……何からどう取り掛かればいいだろう?

 どれもなすべきことだが、雲を掴むような感じで、具体的な手法が思い浮かばない。

「…………」

 行き詰まったような各々の表情を見たアリスは、すっと鋭く目を細めた。

「……あたし、ちょっと行ってくるわ。心当たりあるから話聞いてくる」

「え、誰に? 何の?」

「今は、詳しくは言われへん」

「ついて行くよ」

「ええわ。友好的かどうか保証出来んから、先に確かめてくる。じゃ!」



 戸惑う皆を置き去りに、アリスは駆け出した。尾行されないよう、矮小化して走っていく。

 全員の視線が切れる位置まで行くと、通常サイズに戻った。誰もついて来ていないことを確認し、息をつく。

「さてと……」

 腕を組みつつ歩き出した。

「如月冬真は馬鹿踏んだな。桐生大雅なんてさっさと殺しとけば良かったのに。あー、如月のとこ行かんで正解やったわ。でもなぁ、向井んとこおっても“得”ないしな……」

 ぶつぶつと一人呟き、現状を整理していく。

「脳内お花畑の水無瀬が消えれば、魔術師ども殺せるし、もっと色々物事が進むかと思ったのにそうでもないなぁ。結局“考え”とやらも分からず終いか」

『考えてることがある。もう少しだけ待ってくれないかな……? 口だけでは終わらせないから』

 小春のみぞ知るその考えも、彼女が姿を消した今、分かりようがない。

「向井は水無瀬捜しにお熱やし、他の連中もほぼ空気。唯一使えそうなのは桐生やけど、あいつが如月と切れた今、最早向井たちと離れる選択なんかするわけあらへん。……それにどういうわけか、あいつらには敵が多すぎる」

 そもそも大雅自身はよこしまな野望など持ち合わせていない。この先、蓮たちと反目することもないだろう。

 また、有能な魔術師が味方にいるとしても、いたずらに敵が多いのも事実だった。

 大それた目的に命を懸けることに、アリスは未だに確かな価値を見出せていない。
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