ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
惜しみない情報開示に二人は動揺してしまう。
この余裕といい、発言内容といい、彼女が運営側であることに最早疑いの余地はない。
人知を超えた力により何もかも筒抜けだとしたら、自分たちが運営側を探っていることなどとっくにバレているはずだ。
だからこそ、牽制や警告のために現れたのだと思ったのに、どういうつもりなのだろう。
戸惑う紗夜たちとは対照的に、呪術師は楽しげに笑った。
「何故教えてくれるのか分からないって顔してるね。理由は簡単だ。聞いたことないかい? ……“死人に口なし”って」
即座に火炎が繰り出された。紗夜たちは咄嗟に飛び退き回避する。
呪術師は動じることなく、続いて突風を生み出した。風に煽られた炎が二人を追う。
さらに、水弾を撃ち込んで追い討ちをかけた。
紗夜もうららも何とかすべての攻撃を避け、険しい表情で呪術師を睨めつけた。
「私たちが死人……? 勝手に殺さないでくれる?」
息を切らせてはいたが、紗夜の迫力は充分だった。それでも呪術師は一切怯まない。
くすくすと愉快そうに笑う。
「こうやって子ネズミが逃げ惑う姿を見るのは実に楽しいねぇ。……だが、残念ながらお遊びはここまでだ」
ふっと周囲の火炎が消える。
いつの間にか辺りは霧に包まれていた。白く煙り、視界が悪くなる。
「!」
突如として迫って来た呪術師が目の前に現れ、うららは咄嗟に磁力で弾き飛ばした。呪術師の手には氷剣がある。
「霊媒師がカイハルトにこれを食らわされたって、しばらくご機嫌ナナメでね。無論そんな紛い物とは訳が違う。こいつは、触れるだけで全身氷漬けだ」
その様が脳裏を過ぎり、うららは若干怯んだ。のんびりしている暇はないのだ。
気付けば見失っていた紗夜の姿を捜す。この霧の何処かにいるはずだが、無事だろうか。
うららは、ぐっと拳を握り締めた。……どうすればこの状況を切り抜けられる?
反撃を考えるものの、小春の言葉に躊躇した。────“誰も殺さない”。
呪術師に言葉は通じない。明確に相反する以上、殺すべき存在だと思う。だが、小春に言わせれば、彼女のことも殺してはいけないのだろうか。
……いや、相手は魔術師じゃない。運営側。
すなわち自分たちの敵だ。遅かれ早かれ殺すしかないだろう。そうしたとしても、小春の信念を裏切ることにはならないはずだ。
とはいえ、単独では望みは薄い。紗夜と協力する他にない。
「紗夜!」
「うん……!」
呼び掛けにはすぐに返事があった。おおよその定位を特定し、そこを避けて手を構える。
紗夜が無事であるならば、そちらに呪術師はいない。それ以外の方向から手当り次第に引き寄せ、呪術師が見つかれば、紗夜が毒で制す────。