ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
刺し傷から血があふれる。ふらりと力が抜け、うららはその場に倒れた。
傷口は鋭く痛み、いくつもの傷から感じるその痛みが身体の奥で集約され、鈍痛となって命を削っていく。
満足そうに笑った呪術師が口元を拭う。
「安心しな、殺そうと思ったが見逃してあげるよ。どうやら殺る気を損なってはいないようだからね。まぁ、しかし……」
真っ赤な血の海が広がる芝生と、瀕死の二人を一瞥する。
「このまま出血多量で死んでも、それはあたしの知ったこっちゃないからご愛嬌ね。それじゃ」
辺りに閃光がほとばしる。呪術師は天界へと帰還した。
「ちょっと!」
霊媒師は語気を強めて呪術師を呼び止めた。非難するような声色に、呪術師は首を傾げる。
「情報を与え過ぎでしょ! どういうつもり?」
「何か問題があるかい?」
呪術師はあっけらかんと聞き返した。霊媒師は瞠目する。
「知ったところでどうせ何も出来ないよ。今の、見てただろ」
霊媒師は言い返せなくなり、黙り込んだ。
……確かに支障はないだろう。情報を得たからと運営側を倒せるわけではないのだから。
ふっと呪術師は笑みを浮かべる。
「氷剣も突き刺しといてやったよ。あの子は助からないかもね」
毒を食らわされたことで感情的になっての攻撃だったが、結果的にすべて好転した。
血まみれで息も絶え絶えだった紗夜やうららの様子を思い出す。
霊媒師も「ざまみろ」と笑った。
*
目的や意志の統一を果たした蓮たちの次なる課題は、どのようにして至を見つけ出すか、だった。
一応、紗夜と同じ学校ではあるが、それだけで見つかるはずもない。
仲間がいるということは、自分たちや冬真たちみたく拠点を持っているのだろうが、いったい何処だろう。見当もつかない。
「現れたのは星ヶ丘高校付近で一度、そしてその屋上で一度……だっけ。その辺にいれば会えるかな?」
「でも、屋上に現れたのは端から冬真たちを目的としてって感じだった」
「んー、ならそこで張ってても意味ないか」
各々が推測と意見を交え、考え込んでいた。
「気が向いたら冬真を起こしに来るってことは……冬真のそばにいればいいってことか?」
大雅がぽつりと呟き、首を傾げる。
「ちょっと怖い……」
「佐久間くんが黙ってないんじゃない?」
「や、こんだけいれば律一人くらい封じ込めるんじゃねぇか」
律の存在を懸念すると、大雅が「いや」と割って入った。
「律ならとりあえず大丈夫だ。少なくとも冬真が目覚めるまでは、こっちに手出ししないって約束してくれた」