ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜

 刺し傷から血があふれる。ふらりと力が抜け、うららはその場に倒れた。

 傷口は鋭く痛み、いくつもの傷から感じるその痛みが身体の奥で集約され、鈍痛となって命を削っていく。

 満足そうに笑った呪術師が口元を拭う。

「安心しな、殺そうと思ったが見逃してあげるよ。どうやら殺る気(、、、)を損なってはいないようだからね。まぁ、しかし……」

 真っ赤な血の海が広がる芝生と、瀕死の二人を一瞥する。

「このまま出血多量で死んでも、それはあたしの知ったこっちゃないからご愛嬌ね。それじゃ」

 辺りに閃光がほとばしる。呪術師は天界へと帰還した。



「ちょっと!」

 霊媒師は語気を強めて呪術師を呼び止めた。非難するような声色に、呪術師は首を傾げる。

「情報を与え過ぎでしょ! どういうつもり?」

「何か問題があるかい?」

 呪術師はあっけらかんと聞き返した。霊媒師は瞠目する。

「知ったところでどうせ何も出来ないよ。今の、見てただろ」

 霊媒師は言い返せなくなり、黙り込んだ。

 ……確かに支障はないだろう。情報を得たからと運営側を倒せるわけではないのだから。

 ふっと呪術師は笑みを浮かべる。

「氷剣も突き刺しといてやったよ。あの子は助からないかもね」

 毒を食らわされたことで感情的になっての攻撃だったが、結果的にすべて好転した。

 血まみれで息も絶え絶えだった紗夜やうららの様子を思い出す。

 霊媒師も「ざまみろ」と笑った。



*



 目的や意志の統一を果たした蓮たちの次なる課題は、どのようにして至を見つけ出すか、だった。

 一応、紗夜と同じ学校ではあるが、それだけで見つかるはずもない。

 仲間がいるということは、自分たちや冬真たちみたく拠点を持っているのだろうが、いったい何処だろう。見当もつかない。

「現れたのは星ヶ丘高校付近で一度、そしてその屋上で一度……だっけ。その辺にいれば会えるかな?」

「でも、屋上に現れたのは端から冬真たちを目的としてって感じだった」

「んー、ならそこで張ってても意味ないか」

 各々が推測と意見を交え、考え込んでいた。

「気が向いたら冬真を起こしに来るってことは……冬真のそばにいればいいってことか?」

 大雅がぽつりと呟き、首を傾げる。

「ちょっと怖い……」

「佐久間くんが黙ってないんじゃない?」

「や、こんだけいれば律一人くらい封じ込めるんじゃねぇか」

 律の存在を懸念すると、大雅が「いや」と割って入った。

「律ならとりあえず大丈夫だ。少なくとも冬真が目覚めるまでは、こっちに手出ししないって約束してくれた」
< 196 / 338 >

この作品をシェア

pagetop