ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
「キミたちさ、まだ気付いてなかったんだ。じゃ教えたげる。ボクは運営側の一員」
その言葉に、四人は息をのんだ。
祈祷師の唇が弧を描く。それぞれの反応を楽しんでいるようだ。
「運営側……」
これまでその影を追いながらも、一向に辿り着けなかった存在。
祈祷師が多彩な能力を扱えることは承知していたが、運営側なのであればその強さにも納得だった。
すべての謎が霧消したわけではないが。
「トーマっちに手を貸してたのは、セナコトネを殺すという目的がたまたま一致してたから、そんだけ。特に深い理由はないよ。そんで、まぁ……コトネンは死んだから、トーマっちとの同盟も終わった」
「……今は仲間じゃない?」
「そだねー。もともと仲間でもないケド」
意外なことに祈祷師ははっきりと答えてくれた。蓮は「何だ」と息をつく。
他の面々も同じ気持ちだった。
ならば、別に祈祷師は冬真の味方というわけでもないのだ。
しかし、大雅は眉を顰める。……冬真に取り引きを持ちかけられたとき、彼は祈祷師を仲間だと言っていた。
あれは単に大雅を丸め込むためのはったりだったのだろうか。あるいは今、祈祷師が嘘をついているのだろうか。
「じゃあ冬真のとこ行って至を待ち伏せ出来るな」
「そういう先のことはさ、このピンチを脱してから考えるべきじゃない?」
思わず呟いた蓮に、祈祷師は呆れたように言う。
今度は上下から水柱が湧き上がった。程なくして形が変化し、四人を飲み込まんとしていた。まるで大きな手だ。
下からの水柱は瑚太郎が同じ水で相殺し、上からの水柱は先ほどのように奏汰が凍らせ蓮が溶かした。
その隙に大雅はこの場にいない面々の安否を確認しようと試みた。
自分たちの前に祈祷師が現れたということは、他の皆の前にも同じように運営側の誰かが現れたかもしれない。
(紗夜、うらら。お前ら一緒か?)
『…………』
紗夜たちに繋げたテレパシーは応答がなかった。
以前よりも微弱なように思える。何かあったのかもしれない。
また、アリスに至っては切断されていた。彼女自身が意図してのことだろうか。
「なぁ、目的がどうとか言ってたけど、お前が琴音を狙った理由は何なんだよ? 俺たちも!」
自分たちが狙われる理由は、運営側を倒さんと画策していることを悟られたからだろうか。
だとしても、真っ先に琴音が殺されたのはいささか不自然だった。
「さぁね〜。別に教えてやらんこともないよ? ボクに勝ったらね」
先ほどから同じ攻防が続いていた。隙あらば上から迫って来る水柱は奏汰が氷で制する他ないため、硬直魔法も使えなかった。というか、上からの水柱はそれを封じるための攻撃だ。
下からの水柱は瑚太郎にしか止められない。凍らせたら自分たちの身動きが取れなくなる。
祈祷師が水魔法をメインに使っているのは、蓮の火炎を制するためだろう。
困った事態になった。祈祷師はこうして四人の体力消耗を待ち、上手いこと水が命中すれば落雷でもする気だろう。
そうすれば彼の言う通り一気に片付けられる。
(持久戦か……)