ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜

 大雅は三人の様子を窺った。疲弊が見て取れる。

 そろそろ反動も食らっているはずだ。もう長くは続けられない。

 こうなれば、自分が捨て身で祈祷師を操作するしかないかもしれない。

 攻撃の合間を縫って大雅が距離を詰めようとしたとき、ひゅんっと飛んできた何かが祈祷師の肩を貫いた。

 突然で一瞬の出来事だったが、それを合図に辺りが凪いだ。

 攻撃が止み、祈祷師は「痛った〜……」と肩口を押さえてよろめく。

「……?」

「何だ?」

 蓮たちも戸惑った。何が起きたのだろう。

「邪魔が入ったな。しかも、姿を見せないつもり? 陰湿だなぁ、その魔法とは裏腹に」

 祈祷師が不満そうに言った。

 誰と話しているのだろう。何を言っているのだろう。四人はただただ戸惑う。

 何者かが助けてくれた……?

「でもザンネーン。夕暮れ時だから丸見えだよ、影が」

 祈祷師は地面に伸びる影を指した。四人もそれを目にし、瞠目する。

 自分たちと祈祷師を除き、二つの影があった。影だけ(、、)があった。

 姿の見えない二人の人間がこの場にいる。まさしく透明人間だ。奇妙な光景だった。

 大雅は、はっとする。透明と言えば、至の仲間────。

 もしや、二つの影のうちの片方は至なのだろうか。

「あー、バレちゃったみたい」

 大雅は、はっとする。

 その飄々とした暢気な声色は、間違いなく至だった。

 祈祷師が影の方へ向かって駆け出す。それを見た蓮は咄嗟に「奏汰!」と呼んだ。

 言わんとすることを察し、奏汰は硬直魔法で祈祷師の動きを止める。

「うあ……っ、しまった。やば」

「おぉ、ナイスアシスト」

 祈祷師の顔から余裕の笑みが消えた。

 主導権が移ったのが分かる。後手に回るしかなかったのに、至が流れを変えてくれた。

「!」

 彼は空間から姿を現し、すぐさま祈祷師の額に触れる。

 奏汰が硬直を解けば、祈祷師の身体はその場に倒れ込んだ。────眠りに落ちた。

 蓮は注意深く祈祷師を眺めたが、一向に動き出す気配はない。
 彼にもしっかり効いている。どうやら脅威は去ったようだ。

 至は息をつく。ひとまず四人も安堵した。

「……どうする? 捕らえて洗いざらい吐かせるか?」

 大雅が祈祷師を一瞥しながら誰にともなく尋ねる。貴重な情報源である。

 そうしようかという流れになりかけたとき、突如として眩い光が閃いた。

 瞬いた瞬間に、倒れていたはずの祈祷師が消えていた。……恐らく、天界とやらに強制帰還したのだ。

 倒し切ることは出来なかったものの、至に会うことが出来ただけでも充分だった。至本人が解かない限り、祈祷師も目覚めることはないだろう。

「ありがとな。何処の誰か分かんねぇけど助かった」

 蓮は至に謝意を述べた。

「こいつが至だよ、八雲至。なぁ?」

「誰かと思えば屋上にいた君かぁ。無事で何よりだよ」

 大雅と至はそんなやり取りを交わす。至は続いて各々に向き直った。

「はじめまして。彼が今言った通り、俺が八雲至ですー」
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