ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜

 にこやかに名乗ると、至はあくびをする。

 大雅は冬真の件含め改めて礼を告げたが「いーって、気にしないで」と優しく流された。

「なぁ、お前に聞きたいことがある」

「ふあぁ……。その前に、君たちは誰? 何であいつに狙われてたの?」

 前置きをした蓮より先に至はあれこれと質問した。蓮が代表してそれぞれの名前を明かす。

「えっ、蓮……? 君が? 向井蓮くん?」

「? そうだけど」

 名乗った蓮に、至は何故か反応した。

 元から知っているようなリアクションの仕方だが、どうしたのだろう。蓮は至と知り合いではないはずだが。

「やっと会えた、蓮くん。よかった」

 至は瞳を煌めかせながら、感激したように言った。
 ますます意味が分からない。何なのだろう?

「あぁ、ごめん。ちょっと訳あって、君のこと一方的に知ってたんだ。というか捜してた」

「……え?」

 困惑する蓮たちにそう説明すると、至はふともう一つの影を振り向いた。影は一歩後ずさる。

 至の視線を追った大雅は、その影について尋ねることにした。

「こっちは誰なんだ? 何でずっと隠れてる?」

「それにもちょっと訳あって……。今は姿を見せられない。それでとりあえずは納得して」

 影ではなく至が答えた。そのシルエットだけを見れば小柄な女子に見えるが、どんな“訳”があるというのだろう。

「あー、ごめん。脱線させちゃって。それで、何で狐くんに狙われてたんだっけ?」

「それに関しては俺たちにもよく分からないんだ。それと、あいつは祈祷師って呼ばれてる運営側の一員だよ」

 奏汰が答えた。

 狙われるのは、自分たちの掲げる“打倒運営”という最終目標が、彼らにとって不都合だからかもしれない。

 だが、あの力量の差だ。悔しいが、自分たちなど彼らからすれば脅威にもならないはずだ。わざわざ付け狙う必要があるのだろうか。

「あぁ、やっぱあれが例の(、、)祈祷師……」

 至の眉がぴくりと動いた。

 知っているような口振りだが、それについて追及する前に彼は話題を変えた。

「で、聞きたいことっていうのは?」

「ああ……。実は俺たちもお前を捜してたんだよな」

 蓮は警戒と期待、半々の眼差しで粗方の事情を説明した。小春の存在と彼女が失踪した話、そして。

「────もしかして、お前のとこに小春がいたりしねぇか?」

 図らずも責めるような声色になる。勝手にほとんど確信しているからだ。

 ぴり、と空気が尖り、緊張感が漂う。

 それでも至は変わらず飄々としていた。

「小春……ね。何て言うか、知ってはいるよ。俺たちと行動をともにしてる」
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