ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜

 大雅が問う。紗夜とうららの顔が強張った。

「……呪術師に、襲われた」

 紗夜は硬い声で答えると、その身に起きた出来事を彼らに説明した。

 突如として、うららの屋敷に現れた呪術師────彼女に襲撃された二人は、瀕死の重傷を負った。

「でも、今……」

 どう見ても無傷だ。紗夜もうららも、瀕死だったとはとても思えない。

「たまたま門前を通りかかった“回復魔法”の魔術師が救ってくれましたの。星ヶ丘の三年で、名前は三葉日菜(みつばひな)────何と、彼女は八雲さんのお仲間だそうですわ」

 うららの言葉に、蓮たちは瞠目した。未だ謎の多い至へと近づく道が開けたかもしれない。

「なぁ、至の話が出たついでにいいか? 俺たちもさっき────」

「ちょっと待って、その前に伝えておきたい……。私たち、呪術師から重要な情報を仕入れた」

 蓮を遮り、紗夜が言う。いつまた襲撃されるか分からない。

 呪術師から得たあの情報はすぐにでも共有しておく必要がある。

「呪術師の正体は運営側だった。祈祷師もその一員で、他にあと二人いる。霊媒師と陰陽師……甲斐陽斗を殺したのは霊媒師だった。そして陰陽師というのが、運営側のリーダーだって……」

 各々が瞠目し、息をのむ。謹厳な面持ちになった。

 これまでに得た断片的な情報と照合しても合点がいく。矛盾はない。

 呪術師は何故、そんな情報を与えたのだろう。

 自分たちが運営側を倒さんとしていることは露呈しているはずで、狙われる理由はそれだと思っていた。

 しかし、そんな情報開示を行ったということは違うのかもしれない。

 あるいは、単に紗夜とうららを殺し損ねただけなのだろうか。

「よく聞き出せたな。そんな核心に迫るようなこと」

「危うく死ぬところだったけれど」

 うららは肩を竦める。実際、死んでいてもおかしくなかった。

 日菜がいなければ、間違いなく紗夜ともども命を落としていた。

「……で? 向井は何を言おうとしたの」

「あー、っと。俺たちもさっきな、祈祷師に襲われたんだよ。それを至とその仲間の“影の魔術師”が助けてくれたんだ」

 結局、さらなる謎を残して消えてしまったのだが。

「どう捜すかなぁ……」

 もう一度会いたいところだが、いったいどうすればいいのか分からない。今日の邂逅も運が良かったに過ぎない。

「それについては朗報がありますわよ」

 うららが得意気に言った。日菜から色々と話を聞くことが出来たのだ。

「そいつ、信用出来んの?」

「日菜自身は大人しくて献身的な性格だったし、面倒事には発展しなさそうだけど……」

 懐疑的な大雅に紗夜はそう返す。

 さすがに手の内をすべて明かすことはなかったが、敵意はないように見えた。だからこそ紗夜たちの命を救ってくれたのだろう。

「で、何を聞いたんだよ?」

 至に通ずる情報ということは、すなわち小春にも繋がるのではないか。

 そう考えた蓮は急かした。
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