ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
「八雲さんたちの一味は三人────八雲さんと“影の魔術師”と三葉さん。ただし厳密には少し違って、八雲さんはあくまでニュートラルな立場だそうですわ」
「ニュートラル?」
「つまり、場合によっては敵にもなるし、何なら今も全面的に味方ってわけじゃないということ……」
正確には、日菜と“影の魔術師”は仲間なのだが、至は行動をともにしているだけなのだそうだ。三というより、二プラス一ということだ。
そして、そんな至のスタンスは自分たちにも適用される。
星ヶ丘高校の屋上や今日の公園で蓮たちを救ったのはたまたまで、別に蓮たちに味方しているわけではない。
「その“影の魔術師”が……小春?」
蓮は誰にともなく尋ねる。その声は期待と不安を孕んで細くなった。
「でも、小春にそんな魔法は────」
「あのとき聞こえたのは確かに小春の声だったんだよ。至も言ってただろ、小春は仲間だって」
彼らが三人でいるのなら、消去法でも自ずと“影の魔術師”が小春であるということになる。
「けど、小春じゃない、とも言ってた」
あくまで現状の事実を淡々と返す大雅。蓮も反論を失った。
至のその言葉は意味が分からず終いなのだ。
「名前は言ってなかった?」
「うん……。それは教えてくれなかった」
奏汰の問いに頷く紗夜。
“影の魔術師”については、至も何も語らなかった。理由は分からないが、彼らのうちでその点は徹底しているようだ。
「……変だな、やっぱり」
大雅は言う。
消去法で“影の魔術師”が小春だ、という結論は理解出来る。だが────。
「小春なんだとしたら、何であのとき俺たちに何の反応も示さなかった? それに、眠らされてたんじゃないなら、蓮のメッセージにも応じるはずだろ」
悔しいが、蓮は何も言い返せなかった。まったくもってその通りだ。
それに、小春の魔法は空中浮遊と飛行が出来るという代物である。どう応用しても、透明化なんて不可能だ。
ならば、本当に小春ではないのだろうか。“影の魔術師”とは別なのだろうか。であれば、日菜が嘘をついている……?
「……いずれにしても、もう一度会わないと分からないよね」
奏汰は眉を下げた。全員が同じ感想だった。
この場で可能性の話をしていても埒が明かないだろう。
「八雲さんたちのアジトは聞き出せなかったけれど、代わりにこの場所を教えましたわ」
彼らが、敵か味方か、どちらに転ぶとしても、こちら側は接触を待つしかない。
何らかのアクションがあるはずだ。そう遠くないうちに。