ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
「どんな?」
『いいから君は今日、学校へ来て。もう妙な気は起こさないでよ?』
いい予感はまったくしない。大雅は険しい顔つきになる。
「……、分かった」
そう答える他にない。
冬真に会えば、彼が何をする気かは明白だ。これまでのことを考えれば、会うべきではない。
それでも大雅は気負っていた。彼との因縁を考えれば、やはり逃げるわけにはいかないのだ。
「お前ら、聞いてくれ。冬真が目覚めた。至に起こされたわけではなさそうだった。でも何で起きたかは分かんねぇ」
大雅は仲間たちにテレパシーで伝える。
「とりあえず今日は呼び出されたから行ってくる」
『……待てよ、危険だろ』
大雅の身を案じた蓮は真っ先に異議を唱えた。それは重々承知だ。
「行かねぇ方が面倒なことになる」
律のことが心配というのもあった。もし冬真に嘘をついたことがバレたら、無事ではいられないだろう。
「それと、奏汰。お前は今のうち逃げといた方がいい」
今日の今日で皆に対して攻撃を仕掛けるということはないだろう。
しかし、二、三年の魔術師を洗うということは、奏汰のことも隠し通せないかもしれない。
なるべく大雅が誤魔化すつもりだが、絶対服従させられないとも言い切れない。
「詳しくは聞けなかったけど、冬真には魔法で殺す算段があるらしい。だから、あいつには見つからねーようにしろ」
『分かった』
大雅の忠告を受け、奏汰は廃トンネルに匿われることになった。
もしものときの戦力として、護衛するために瑚太郎も集う。
他の面々は学校へ向かった。未だ知らない魔術師の情報が転がっているかもしれず、また、人の多いそこなら運営側からの突然の襲撃も避けられると踏んだ。
蓮は教室に入ると、真っ先に小春の席を確認した。
当然と言えば当然だが、登校している気配はない。
慧と琴音の花瓶の載った机。瑠奈と小春の空席。何だか心に大きな穴が空いたような気になった。
屋上に集まって昼食をとりながら、ゲームに関して色々と話し合っていたことが最早懐かしい。
もう二度と、戻ることはない。
「おはよう。お前ら、席につけー」
八時半の本鈴が鳴ると、担任が入ってきた。信じられないくらいいつも通りホームルームが始まる。
しかし、担任は不意に謹厳な面持ちになった。
「水無瀬と胡桃沢について、何か知ってる奴はいないか」
驚いた蓮はわずかに目を見張った。その話題が出るとは意外だった。
「無断欠席が続いていて、本人とは連絡が取れない状態だ。双方、行方不明者届は出ておらず、親御さんも“友人宅に泊まりに行っている”の一点張り……。だが その友人が誰なのかは分からん。現状を見る限りは、事件性がないとは言えない」