ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
「何、って……」
「捜しに行けよ、水無瀬さんのこと。なに暢気に授業受けて昼飯食ってんだよ」
「え? おま……何、どうしたんだよ」
何からどう尋ねるべきか、蓮はすっかりペースを乱され、戸惑いに明け暮れた。
何なのだろう。何を責められているのだろう。
彼女は何を知っているのだろう。
困惑する蓮を見兼ねた雪乃はため息をつき、スマホを取り出した。
液晶は蜘蛛の巣のようにバキバキに割れていたが、画面を見ることは出来る。とある動画を再生して見せた。
そこに映し出された映像に、蓮は息をのんで瞠目した。
思わずペットボトルを取り落とす。全身が震える。
「何、だ……これ……」
*
一方、登校した大雅は廊下で冬真と出くわした。
彼は顳顬に手を当てる。
(始めよう)
「……ああ」
平然と答えて見せたものの、大雅は内心安堵していた。絶対服従させられないなら、意図的に奏汰のことを隠しておける。
だが、冬真はどういうつもりなのだろう。
律の嘘により、大雅を信用することに決めたのだろうか。
あるいは律が“大雅に記憶操作を行った”というような嘘を、さらについてくれたのだろうか。
いずれにせよ、好都合だった。
大雅は昼までに、二、三年の精査を終わらせるべく動く────。
昼休みになると、冬真とともに屋上へ出た。
(結果は?)
「二年は一人……早坂瑚太郎」
もともとはもっと人数がいたはずだ。生きていれば陽斗もそうだった。
期日に近づくにつれ、魔術師はどんどん減っているのだろう。
瑚太郎のことは、冬真に隠し通すことが出来ないため、大雅は正直に告げた。冬真はヨルの存在も正体も知っているからだ。
「三年は────お前含めて二人だ」
大雅は慎重に言った。冬真の眉が、ぴくりと動く。
吟味するかのような反応だ。
「もう一人は四組の三葉日菜」
日菜のことは、明かしても日菜自身に悪影響や実害はないと判断した。奏汰のことは伏せておく。
(二人だけか)
念を押すような、見通すような、そんな言葉だった。
大雅は「ああ」と真剣な声音で頷く。ここで冬真を欺けなければ、奏汰の安全が脅かされる。
少しの間、冬真は黙っていた。もったいぶるような緩慢とした動作で、再び顳顬に触れる。
(じゃあ、とりあえずその子の魔法確かめて来てよ)
大雅はひっそりと息をつく。ひとまずは上手くいったようだ。
「分かった」
大雅は短く答え、さっさと屋上を後にする。
彼女の能力については既に知っているが、一度話しておきたかったため都合がいい。
三年四組の教室を覗き、日菜を呼び出した。そのまま、三秒間目を合わせる。