ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
日菜から聞いた睡眠魔法の全容を頭の中で反復しながら、大雅は屋上を目指して歩く。
理解出来た。至は反動に耐え切れず眠ってしまったのだ。それにより、冬真が目覚めた。
昨日の様子にも頷ける。祈祷師を眠らせたために、受ける反動が倍以上になった。何度もあくびをしていたのはそのためだ。彼は終始、猛烈な睡魔と戦っていた。
日菜が彼の能力の全容を明かしてくれたのが、自分たちを信用してのことだとしたら、至との協力は充分に現実的だろう。
『大雅、場所を移そう。旧校舎へ来て』
不意に冬真からテレパシーを受けた。
律でも呼びつけたのだろうか。そんなことを推測しながら、大雅は了承して方向転換する。
雑然としていて寒々しい旧校舎は依然として人気がない。その一角に冬真と律がいた。
冬真は既に律を傀儡にしていたため、彼を介して会話する。
「彼女は何の魔術師だって?」
「回復魔法」
「回復ね……、それもまた便利だな。どんな怪我でも治せるの?」
大雅は冬真の問いかけに素直に答えた。日菜の魔法について細かに説明する。
彼は別に、日菜とは敵対していない。問題ないはずだ。
「死者蘇生は不可能か。ま、そんな魔法があったらさすがにチートだよね」
冬真は納得したように頷きつつ言う。
一拍置いて、柔らかい眼差しを唐突に鋭くした。
「……で、三年の魔術師は本当に僕含めて二人だけか?」
やけにしつこい念押しだった。
大雅は警戒しつつも、特別反応しないよう心がける。
「……ああ」
「────そっか、残念だな。君はまた嘘をつくんだ」
思わぬ言葉だった。大雅は弾かれたように顔を上げ、目を見張った。
呼吸も瞬きも忘れる。何故、分かったのだろう。
「知ってるんだよね、僕。三年の魔術師はぜんぶで三人だってこと。今分かったよ。君が嘘ついたってことは……もう一人は君の仲間だな?」
「……!」
「そんでもって、僕に隠さないといけない理由がある。ここまで来れば馬鹿でも分かるよ。そいつこそが、硬直魔法の魔術師ってことだろ」
冬真の言う通りだった。彼の推測は正しい。
それでも大雅は動揺と狼狽を必死で押し込めた。認めたら終わりだ。
「……違う、二人だって言ってんだろ。三人? んなこと何でお前が知ってんだよ」
「彼に聞いたんだよ。ほら、半狐面の彼……知ってるよね?」
「あ……?」
興がるように微笑んだ冬真の言葉に、大雅は驚愕した。
────祈祷師。
またしても運営側である彼が、冬真の味方をした。いったい何故?
琴音の件以降、同盟は終わっているのではなかったのか。
陽斗を殺害したのが霊媒師だと判明した今、あの晩の屋上での冬真の言葉ははったりであることが確定したはずだ。
再び手を組んだとでも言うのだろうか。