ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
第3話 11月6日
小春は朝の情報番組を観ながら朝食をとっていた。
天気予報が終わり、ニュースに切り替わる。
『昨日午後、都内にある私立高校で、全身が石化した遺体が発見されました』
弾かれるように顔を上げた。
映し出されているのは間違いなく、小春の通う名花高校の映像である。
『遺体は数日前から行方が分からなくなっていた男子生徒のものであると見て、警察は調べを進めています』
アナウンサーは淡々と読み上げた。
たったそれだけが報じられると、すぐさま次のニュースへ移行する。
妙だった。石化死体なんてもっと騒ぎになっても良いはずなのに。
「怖いわね……。小春の学校じゃない」
弁当箱におかずを詰めていた母親が手を止め言った。
「そ、そうだね。……おかしいよね? 石化なんて」
何となく、自分の感覚が正しいのかおかしいのか自信がなくなり、小春は確かめるように母親に問うた。
「そうね、あんたも気を付けるのよ」
「…………」
小春は咄嗟に答えられなかった。
上手く言葉に出来ない違和感のようなものが巣くう。自分がおかしいのだろうか。
明らかに異常な変死体が発見されたのに、何故そうも平然としていられるのだろう。
「……行ってきます」
母親から弁当を受け取った小春は、さっさと家を出た。
門前に立つ蓮の背を見ると、何故か心からほっとした。
「蓮、おはよ」
「……おう。無事みたいだな」
いつも通り、二人で歩き出す。
小春は足元に目を落としつつ歩いた。
「朝、和泉くんのことがニュースになってた」
「そっか」
「でも、何か……変だった。明らかに変死体だよ。普通はもっと騒動にならない?」
「そういう気味の悪ぃちょっとした異常はな、だいたい運営側の仕業って考えとけば良いぞ」
SNSにしてもそうだ。
都合の悪いことは、運営側が何らかの超自然的な力を用いて操作している。
「運営側……」
小春は小さく呟いた。
まったく全貌が掴めないが、やはり人間ではないのだ。
運営側はことごとく、魔法を基に発生した事件や死体を隠匿している。
警察の目も曇らせていた。
明日には和泉の件も、未解決事件として捜査終了となるはずだ。
魔術師が何をしても罪に問われないのは、皮肉にも運営側のお陰だった。