ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜

 不機嫌そうな低い声が返ってきた。おおよそ瑚太郎の声とも口調とも似つかない。

 人相もまったく違う。姿かたちはそうなのに、別人だと分かる。

 奏汰は安堵から一転、さらに困惑した。

「まさか……ヨル? まだ日中なのに」

「気安く呼ぶな」

 瑚太郎もといヨルは、勢いよく起き上がった。

 不満気な顔をしていたかと思えば、はたと一瞬動きを止める。
 すん、と奏汰に鼻を寄せた。

「お前、魔術師だな」

「……!」

 奏汰は咄嗟に答えられなかった。

 ヨルが夜な夜な魔術師殺しをしているという話を思い出したのだ。

「最近はあの“弱虫野郎”のせいで夜中に出歩けねぇから溜まってんだよ。なぁ、お前殺していいか?」



*



「悪ぃ、もっかいその動画見してくれ」

 場所を屋上へと移し、蓮は雪乃に言う。

 彼女は心底呆れたように、大袈裟なため息をついた。

「はぁ……、お前理解力なさ過ぎ。よく水無瀬さんに愛想尽かされないな」

「うっせ。お前は二面性あり過ぎだろ」

 雪乃は文句を垂れつつも再び動画を再生してくれた。



 動画内の風景は踏切────小春が消えた場所だ。画面にはしっかりと小春が映っている。

 高齢女性の落とした小銭を拾い上げると、電車が通過する。線路の向こう側に立っている蓮も映っていた。

 ぱん、と手を打ち鳴らすような音が響く。
 そうして小春が振り返りかけると、彼女は消えてしまった。

 それから現れた祈祷師が、そのまま蓮を瞬間移動させてしまう。

『さぁ、ミナセコハル。邪魔者は消えた。遠慮なくぶっ殺させて貰うよー』

 彼がそう言うと、消えたはずの小春が突如としてその場に現れた。

 ……少し動画を巻き戻す。小春が消えている場面をよく見れば、地面に影があった。

 これは至の仲間である“影の魔術師”と同じだ。そこに消音魔法も合わせ、擬似的に消されていたようだ。

 その後交わされた、祈祷師と小春のやり取りを聞く。
 そのうちに、何らかの魔法によって彼女の身体が分断される────。

「……っ」

 この部分は何度見ても、平静さを欠いてしまう。

『焚き付けた主犯のキミには楽な死に方させないよー。ボクたち運営側は、ルール違反者(、、、、、、)に制裁を加えなきゃね』

 苦しむ小春に祈祷師が放ったその言葉は、さらなる疑問を呼び寄せた。

「ルール違反……?」

 いったい何のルールに違反していたというのだろう。

 やがて、画面の中の小春が力尽きる。

 絶命した彼女に祈祷師が手を翳したところで、動画は終わった。
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