ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
「なぁ、この後どうなったんだよ! 小春は死んだのか……? つか俺、ここで祈祷師と会った覚えなんかねぇぞ! 確かに小春は消えたけど」
「落ち着けよ」
「落ち着けるかよ! どうなってんのか、マジで意味分かんねぇんだけど」
狼狽える蓮とは打って変わって、雪乃は冷静そのものだった。
「結論から言うとどうもなってない。水無瀬さんも死んでない。今は分かんないけど、少なくともこのタイミングでは」
「は……?」
眉を寄せる。開いた口が塞がらない。
現実を直視すれば、間違いなくこの動画内では、小春は死んでいる。
胴体を分断されて生きていられるわけがない。
雪乃はいったい何を言っているのだろう。というか、そもそもこの動画は何なのだろう。
混乱を極める蓮を一瞥し、雪乃はスマホをしまった。それから、真剣な面持ちで彼を見据える────。
「あたしはな、“時間逆行”の魔術師なんだよ」
堂々たる態度で、雪乃は告げた。
「最大で二分間、時間を戻せる。このときは、水無瀬さんが殺されたのを見て時間を巻き戻した。この変な男が現れる直前に……」
瞠目した蓮の瞳が揺れる。
まさか彼女が魔術師だったとは。それだけでなく、小春が失踪するきっかけとなった出来事に深く関わっていたとは────。
雪乃のお陰で、小春が祈祷師に殺された、という事実は消えてなくなった。
だが、それでどうなったのだろう。
どうしてそのまま、姿を晦ます羽目になったのだろう。
「それで……?」
続きを促すよう絞り出した声は震えて掠れた。
雪乃の言葉に衝撃を受けたためか、この先に続く彼女の話が恐ろしいためか。
「巻き戻した後、水無瀬さんを連れてあの場から逃げた。この動画を見せて、これから起こることを教えた。……水無瀬さんは自分が狙われたことを知って、真っ先にお前を心配してた」
「俺、を?」
雪乃の表情が硬くなる。小春のことを思い出す。
『蓮の近くにいたら、蓮まで危なくなるのかな』
まさに自分が殺されようとしていた────実際、殺された────というのに、まず蓮の身の安全を案じていた。
それから彼女は雪乃に深く礼を告げ、一人で帰路についたようだった。
「……あたしが知ってるのはここまで」
何故、連絡を絶ったのか。何故、行方を晦ましたのか。
その後の小春の動向については、雪乃の知るところではない。
「踏切では救えたけど、あれ以降にまたあの変な男に狙われたのかもしんない。……でも、巻き戻すにしろ、それならもう手遅れだ」