ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
第17話 11月25日[後編]
*
大雅は何度も冬真に掴みかかっては、物理攻撃を仕掛けた。
律が植え付けた殺意により、完全に我を見失っていた。
冬真は何とか絶対服従の術をかけようと試みるが、五秒間の隙すら生まれない。
攻撃を躱しながら、どう切り抜けるかを考えていた。
殺したいのは山々だが、それには魔法の使用が大前提だ。単に物理攻撃返しで殺しても意味がない。それではテレパシー魔法が無駄になってしまう。
そして、冬真が魔法を使って殺すとしたら、操作して────ということになるが、自殺では駄目だ。
ならば、事故しかない。
対象を操って意図的に事故に遭わせる。
直接的な死因は魔法ではないものの、魔法がその死を招いているのだから問題はない。“魔法による殺人”だ。
そのためには、まずは傀儡にするか絶対服従させるかしなければならないのだが、厄介なものだった。
冬真が同時に傀儡に出来るのは一人だけである。
大雅を始末するなら、律の傀儡を一度解除し、大雅を傀儡にして事故に遭わせるのが手っ取り早い。
しかし今はそうもいかなかった。
普段なら味方であるはずの律と、今は敵対している。律の傀儡を解けば、自分に牙を剥くはずだ。
律も大雅も別に冬真の魔法を奪おうという意思はないため、殺す手段にはこだわらないだろう。
“魔法を奪いたい”という意思があるなら、どちらの魔法も戦闘向きではないために余裕があったが、そうでないからかえって都合が悪い。
(一旦、気絶させるしかないか……)
殺さない程度に痛めつけて。
冬真は旧校舎内に落ちていた鉄パイプを拾い上げる。迫ってくる大雅に向け思い切り振った。
バキッ、と痛々しい音が響く。恐らく大雅の肋骨が折れた。
「く……っ」
大雅は痛みに悶絶し、よろめいた。彼の勢いが削がれる。
その隙に冬真は大雅を蹴飛ばした。彼は瓦礫の山に突っ込む。
ガシャン! と派手な音が反響した。
負傷により動きは止められたが、意識はまだある。
「まだ続けるの? それじゃ勝てないのは明白でしょ。僕を殺すなんてどの口が言ってるんだか……。 あはは、やれるもんならやってみなよ」
冬真は律越しに挑発し、逆上した大雅が再び迫ってくるのを狙った。感情的になった相手は隙だらけだ。
「…………」
しかし、予想に反して沈黙が落ちる。
大雅は蹲った姿勢のまま顔を上げなかった。
わずかに肩を震わせている。
その様子を認めた冬真は訝しむように眉を寄せた。
(何だ……?)
粉塵が消える。視界が晴れる。
大雅は、先ほど捨てさせたはずの鏡の欠片を手にしていた────。
「!」
冬真は身を強張らせる。
まずい。あれで自殺でもされようものなら。
大雅は何度も冬真に掴みかかっては、物理攻撃を仕掛けた。
律が植え付けた殺意により、完全に我を見失っていた。
冬真は何とか絶対服従の術をかけようと試みるが、五秒間の隙すら生まれない。
攻撃を躱しながら、どう切り抜けるかを考えていた。
殺したいのは山々だが、それには魔法の使用が大前提だ。単に物理攻撃返しで殺しても意味がない。それではテレパシー魔法が無駄になってしまう。
そして、冬真が魔法を使って殺すとしたら、操作して────ということになるが、自殺では駄目だ。
ならば、事故しかない。
対象を操って意図的に事故に遭わせる。
直接的な死因は魔法ではないものの、魔法がその死を招いているのだから問題はない。“魔法による殺人”だ。
そのためには、まずは傀儡にするか絶対服従させるかしなければならないのだが、厄介なものだった。
冬真が同時に傀儡に出来るのは一人だけである。
大雅を始末するなら、律の傀儡を一度解除し、大雅を傀儡にして事故に遭わせるのが手っ取り早い。
しかし今はそうもいかなかった。
普段なら味方であるはずの律と、今は敵対している。律の傀儡を解けば、自分に牙を剥くはずだ。
律も大雅も別に冬真の魔法を奪おうという意思はないため、殺す手段にはこだわらないだろう。
“魔法を奪いたい”という意思があるなら、どちらの魔法も戦闘向きではないために余裕があったが、そうでないからかえって都合が悪い。
(一旦、気絶させるしかないか……)
殺さない程度に痛めつけて。
冬真は旧校舎内に落ちていた鉄パイプを拾い上げる。迫ってくる大雅に向け思い切り振った。
バキッ、と痛々しい音が響く。恐らく大雅の肋骨が折れた。
「く……っ」
大雅は痛みに悶絶し、よろめいた。彼の勢いが削がれる。
その隙に冬真は大雅を蹴飛ばした。彼は瓦礫の山に突っ込む。
ガシャン! と派手な音が反響した。
負傷により動きは止められたが、意識はまだある。
「まだ続けるの? それじゃ勝てないのは明白でしょ。僕を殺すなんてどの口が言ってるんだか……。 あはは、やれるもんならやってみなよ」
冬真は律越しに挑発し、逆上した大雅が再び迫ってくるのを狙った。感情的になった相手は隙だらけだ。
「…………」
しかし、予想に反して沈黙が落ちる。
大雅は蹲った姿勢のまま顔を上げなかった。
わずかに肩を震わせている。
その様子を認めた冬真は訝しむように眉を寄せた。
(何だ……?)
粉塵が消える。視界が晴れる。
大雅は、先ほど捨てさせたはずの鏡の欠片を手にしていた────。
「!」
冬真は身を強張らせる。
まずい。あれで自殺でもされようものなら。