ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜

 紅が瑠奈を救ったのは偶然だったが、二人はそれから行動をともにするようになった。

 瑠奈はとにかくその謎の男の存在が恐ろしかった。

 何故狙われたのか分からず、身を隠すことにしたのだ。そのための一環として、連絡を絶った。テレパシーも切断した。

 それでも、祈祷師の仲間と思しき女などに何度か狙われたが、そのたびに紅のお陰で生き永らえてきたのだった。

 彼らに狙われる理由は未だに不明である。

「その狐男は、祈祷師という運営側の者だ」

 律が言う。ただ者ではないことは分かっていたが、まさか運営側だとは思わず、瑠奈は「え!?」と驚愕した。

 何故、運営側に狙われるのだろう。ますます分からなくなる。

「“制裁”か……」

 大雅は眉を寄せつつ呟く。

 制裁と言うからには、何か悪いことをしている、ということだ。

「心当たりねぇのか?」

「そりゃまぁ、人殺してるし……。でも、小春ちゃんに言われてからは誰も殺してないし戦ってもないよ。そう決めたから。……小春ちゃんに誓って」

 瑠奈は毅然として答えた。

 彼女に気付かされ、彼女の優しさに触れ、もう二度と過ちは繰り返さないと決めたのだ。

「……そっか」

 小心者で怖がりのくせに、思いのほか決意は固く芯が強いようだ。

 意外に思いながら納得しかけたものの、違和感を覚える。おかしい。

 そもそも、バトルロワイヤルは殺し合いを前提としている。

 殺しを悪とし、それを裁いているのだとしたら、運営側のスタンスに矛盾が生じる。

 何故なら、そもそもこのゲームを強いているのは運営側なのだから。

 それに従ったのに“制裁”などという名目で殺されたのでは、たまったものではない。

 瑠奈が魔術師として殺しに積極的だった頃は、運営側が介入してくることはなかった。

 しかし、殺さないと決めてからは命を狙われるようになった。────制裁と称して。



「……そういうことか」

 律が呟く。大雅も頷いた。

 瑠奈は「何?」と首を傾げる。

「俺たちも運営側に追われてんだ。現に琴音とか……運営側に殺された仲間もいる。関与は不確かだけど、小春も消息不明なんだ。でも、運営側の仕業って線は薄くない」

 大雅は瑠奈の問いに直接答える前に、現状の説明をした。

 思わぬ状況に置かれていることを知り、瑠奈は瞠目する。

「琴音ちゃん、死んじゃったの……? 小春ちゃんまで行方不明なんて……」

 狼狽し、声が震えてしまう。

 以前、琴音が憎い敵だったことは事実だが、今ならば協力出来る味方になりうると思ったのに。

 慧のことも、心から謝って償いたいと思っていたのに……。

 そして、堕落していた瑠奈を諭してくれた、ゲームの本質に気付かせてくれた小春までもが消えてしまうとは────。
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