ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
大雅は首肯する。今口にしたことは紛うことなき事実だ。
それから、謹厳な面持ちになった。
「運営側に狙われる奴らの共通点が……やっと分かった。────殺し合いを放棄したんだ」
魔法という異能を持つ者のバトルロワイヤル。
魔術師同士の殺し合い。
そのルールを違反、即ち殺意や殺戮の権利を放棄したが故の制裁なのだ。
プレイヤーである資格はない、と判断されたのだ。
運営側は“魔術師同士で殺し合うこと”をルールと規定しているから。
(だったら……)
大雅は一歩踏み出し、宙を見上げて言った。
「おい、運営。聞いてるか! 俺たちは戦う。殺し合いも承知だ。分かったら邪魔すんな!」
周囲に気配はないが、連中はきっと何処かで聞いているはずだ。
風で梢がざわめく。黒い烏が飛び立つ。
「ふん……、こんな分かりやすい嘘が通用するか?」
紅の言葉に瑠奈は焦った。
せっかく大雅が牽制したのに、聞かれたらどうするのだ。
「大丈夫だ。殺し合う意思がないことを明確に示さない限り、連中は干渉して来ない。魔術師同士が手を組んで協力することは、許容されているようだしな」
至極冷静に律が言った。
状況を鑑みて殺せない、殺さないことは看過されている。
あくまで真正面からゲームの根本や殺意を否定した者が制裁対象なのだ。
瑠奈は思わず律を見つめた。改めて考えると、彼がここにいることが少し意外だった。
「律くん、冬真くんのもとから離れたんだね」
「……色々あってな。やっぱり人なんて信用出来ない。いや、期待した俺が身勝手だった」
自嘲するような笑いを浮かべた律の肩に、大雅は腕を回した。
「ばーか。最初からあいつはクズなんだよ」
律は少し驚いたように大雅を見やる。
「お前は戦友だと思ってたかもしんねーけど、あいつにとっては所詮駒。はっきりしただろ。利用されてることに気付かねぇまま死ななくてよかったじゃねぇか」
「……気付いても殺されかけたがな」
思わずそう返した。ぽんぽん、と大雅は律の背を軽く叩いて離れる。
これまで律は大雅を侮り、誤解していたのかもしれなかった。
何度服従させられ、何度本来の記憶を失っても、冬真に立ち向かうことを諦めない大雅を、懲りない馬鹿だと思っていた。
そうではなかった。
彼が何故諦めないのか、今なら分かった気がする。自分ではなく、仲間のために戦っているからだ。
大雅の中では既に、律もその中の一人としてカウントされている。
自分は散々彼を苦しめたというのに────本当に馬鹿だ。