ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜



 四人は廃トンネルへと到着した。

 大雅は振り返り、それぞれと目を合わせつつ言う。

「よし。そんじゃここで皆を待つ間、お前らに俺たちのことと、これまでにあったことを詳しく共有しとく」



*



「薄々気付いてると思うけど……。小春ちゃんはね、記憶喪失なんだ」

 至はあくまで穏やかな声で、残酷な事実を伝えた。

 蓮の瞳が揺れる。誰か、などと聞かれた時点で、あるいはもう少し前から、そうなのかもしれないという予感はあった。

 それでも、はっきり告げられるとまた衝撃を受けるものだ。

 アリスも納得する。今朝の様子を見ればそうとしか思えない。
 
「そっか、それで……」

 奏汰は呟いた。小春だけど小春じゃない、という至の言葉も、それなら理解出来る。

「何で、そんなことに────」

 蓮が消え入りそうな声で尋ねると、至は「うん」と頷いた。

「順を追って話すよ」

 蓮の目を優しく覗き込んだ至は、その宣言通り、仔細を語り出した。

「────まず、小春ちゃんと蓮くんは、雪乃ちゃんの言う通り祈祷師の襲撃に遭った。蓮くんは分からないけど、少なくとも小春ちゃんは殺された。でも、雪乃ちゃんが時間を巻き戻したことで助かった。彼女は小春ちゃんを連れて逃げて……この日からなんだよね? 小春ちゃんと連絡が取れなくなったのは」

 確かめるように問われ、蓮は首肯する。

「ああ、そうだ。そんで次の日から小春は消えた」

 小春の母親は、友だちの家へ泊まりに行くという本人からのメッセージを信じ込んでいる。

 ここまで音信不通が続いて何の不信感も抱かないなど、普通ではありえないのに。

 とはいえ、信じ込んでいるのは恐らく運営側による何らかの操作のせいだ。

 クラスメートや担任、警察も同じように、このゲームで起こる不自然なことに何ら疑問を抱かないようになっている。

 というか、疑問を抱いてもその思考を書き換えられる、といった方が正しいかもしれない。

「その、小春ちゃんが消えたことに関してなんだけど、これも真実は小春ちゃん本人しか分からない。……正確には、記憶を失う前の小春ちゃんね」

 至はそう前置きし、さらに続ける。

「だから、これは俺の憶測に過ぎないけどさ。たぶんその日、というか深夜に小春ちゃん、ガチャ回したんじゃない?」
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