ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
全員が全員、驚愕した。
それぞれが思わず小春を窺うように見たが、小春はその中の誰よりも戸惑っていた。
「ごめん、小春ちゃん。ガチャとか意味分かんないよね。あとでまとめて説明するよ」
魔法ガチャはおろか、ゲームのこともすっかり忘却しているのだ。
至は彼女の混乱を察しつつ、全員への説明を優先させた。
「蓮くんたちは小春ちゃんの魔法知ってる?」
「あれだろ、空飛ぶやつ」
「そうだね。浮遊魔法というか、飛行魔法というか」
その能力は、小春が自らガチャを回して得たものだと把握している。代償は五年分の寿命だと言っていた。
「でも、それだけじゃない。彼女はそれに加えて光魔法の持ち主でもある」
「光……?」
「透明化じゃなかったんだ?」
至は首肯する。
「そう。透明っていうか……姿を消すことが出来るのは所謂、光学迷彩。理屈は難しいから省くけど、光を操れるから擬似的に透明化出来るってわけ。見えないだけで実体はあるよ。だから影も見える。質量とか熱とか音とか臭気とかも。それから周囲の温度や湿度なんかが変化すると、この擬似的な透明化も破綻する。そういう仕組み」
姿を消すことが出来るのは、光魔法の応用だったのだ。
「……何や、何かまともに喋ったらかしこ見えるな」
「えぇ? 俺、馬鹿だと思われてたの? 心外だな」
本音を漏らしたアリスに、至はやや大袈裟に肩を落として見せた。
普段は飄々としており、何を考えているか分からないだけに、真剣かつ饒舌な彼は少し意外な姿だった。
「おい、至! 脱線すんなよ」
「ごめんごめん、そうだね……。光魔法の詳細については俺もすべてを把握してるわけじゃないから、完璧な説明は出来ない。でもそのうち分かるんじゃないかな。小春ちゃんが使ってるとこ見てれば」
「そんな雑な……」
「いや、本題はそこじゃないんだよ。俺が言いたいのは────小春ちゃんはガチャを回した。それで光魔法を手に入れた。それと引き換えに記憶を失ったんじゃないか、ってこと」
光魔法の代償が記憶だった。
そう考えれば、小春が消えてから彼女の身に起きた変化にも確かに合点がいく。
至はさらに続けた。
「────俺が小春ちゃんと初めて会ったとき、彼女は他の魔術師に襲われてた。それをたまたま俺が助けたんだ。ま、目の前で人が死ぬってのに黙って見てるのも気分いいもんじゃないしね。相手のことは殺したよ。でも、魔法はいらないから取ってない。睡眠魔法って、ただでさえ身体がしんどいからね。これ以上負荷かけたら、俺死んじゃう」