ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
冬真は悠々と小春に歩み寄る。
涙を滲ませながら、小春は精一杯冬真を睨みつけた。
しかし、彼はお構いなしに小春の顎をすくい目を合わせる。
五秒が経過する────。
「さぁ、これで晴れて君も僕の駒だよ」
そう言うと、さらに笑みを深くした。
「なぁ。“気付いた”って何に?」
アリスが首を傾げる。
「この植物魔法があれば、硬直魔法なんて別にもういらないよね、ってこと」
「あー……確かにそうかもしれへんな」
蔦で捕縛してしまえば、充分に相手の動きを封じ込める。
「そして、君のお陰で僕の脅威となる魔術師も割れた」
「時間逆行魔法の五条雪乃か」
アリスは持ち前の情報収集能力で、その事実をとっくに掴んでいた。
雪乃の存在を教えてくれたことは、共闘を持ちかけられた冬真がアリスの手を取ることとした理由の一つである。
無論、信用はしないが、利用価値はあるだろう。
「そう……、彼女は当然殺すとして。脅威の正体が判明した今、魔術師を特定するために生かしてた大雅にも、もう用はない」
律まで反旗を翻した今、彼を操ることは出来ないだろう。
しかし、それで構わない。もう大雅の存在も能力も必要ない。
「君がいれば、もう一人の────時間停止魔法の魔術師を特定するのも難しくないだろうしね」
「そのくらいわけない。あたしも伊達に情報屋ってわけやないからね」
「期待してるよ」
そう言うと、冬真は悠然と振り返った。
「……さて、そろそろかな」
そのとき、落ち葉を踏み締める複数の足音が響いてきた。蓮たち六人が現れる。
彼らはそれぞれ、血まみれで倒れる至と、囚われている小春に驚きを顕にしていた。
「小春、無事か! おい、至……?」
「うそ……」
至が息をしていないのは、傍目にも明らかだった。
衝撃を受ける彼らを見やり、冬真は楽しそうに笑う。
「来た来た」
「何や、何か新顔がおるな」
アリスは紅の姿を認め、腕を組んだ。
見覚えはない。少なくとも、自分も把握出来ていない魔術師だ。
「冬真……」
大雅は眉を寄せ、奥歯を噛み締めた。
相手が冬真であることは予想の範囲内だったため、そう驚くこともない。
テレパシーの時点で危ぶんでいたが、至の方は手遅れだったようだ。
それでも、囚われているとはいえ、小春が無事であったことは喜ぶべき事実である。
「アリス、お前も無事だったんだな……」
「無事も何もあらへんし。あんたらの頭の中にも花咲いてるんか?」
今さら嘘をついたり演技をしたりして白を切り通す気など、アリスにはなかった。
彼女は吐き捨てるように笑う。
大雅の感じた嫌な胸騒ぎは、最悪の形で的中した。
「裏切り者────ってわけだな」
平板な声で紅が言う。
その認識は、全員の感情を煽った。
怒りなり失望なり軽蔑なり、アリスに対するかつての仲間としての信頼感が、音を立てて崩れ落ちていく。