ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜



 一同は大雅の言葉通り、河川敷で合流した。

 奏汰はきょろきょろと周囲を見回す。

「八雲くんは?」

「……間に合わなかった」

 目を伏せ、蓮が答える。奏汰は瞠目した。

 あの場で見聞きした一部始終を彼にも共有しておく。

「ねぇ……。あれはどういう意味だったの?」

 瑠奈が不安気な表情で小春を見つめた。

 何を聞きたいのかは明白だった。誰もがその疑問を抱いているのだから。

 アリスが口にした、小春が至を殺した、という言葉のことだ。

「ああ、何があったんだよ?」

 小春は眉を下げ、目を落として俯いた。

 泣きそうな顔で口を開く。

「……あの────」

「ちょっと待て」

 何故か大雅が制した。

「おい、何でだよ」

「いいから。小春、もっかい俺と目合わせろ。とりあえず、さっきの出来事についてだけ……全員に記憶を転送してやる」

 話を聞くより正確だ。

 補正も私情も挟まらない。何よりその方が効率がいい。

 先ほどの要領で、大雅と小春は視線を交わす。

「!」

 彼女の記憶を読み取った大雅は、目を見張り息をのんだ。



 ────今朝、至も小春もアリスも拠点で目を覚ました。

 記憶のない小春にあらゆる説明を終えたところで、気分転換に彼は外へ出た。

 色々な情報を一気に聞くこととなり、頭の中がいっぱいいっぱいになった小春も、彼と同じように扉の方へ向かう。

 外の空気を吸いたくなった。

『……?』

 何故か、至は扉から出てすぐのところで立ち止まっていた。

『至くん? どうし────』

『来ちゃ駄目だ』

 背を向けたまま、彼は小春を制止する。反射的に足が止まる。

 どうしたのだろう。

 小春が戸惑っていると、ざく、と何かが突き刺さるような音がした。

『……!?』

 まず、赤色が見えた────。

 至の背中がみるみる血で染まっていく。彼岸花が咲いたかのようだった。

 その中心から突き出た樹枝から、ぽたぽたと鮮血が滴り落ちる。

 小春は目を見張った。何が起きたのか分からなかった。

 至の身体を、棘だらけの樹枝が貫いている。

 唐突に訪れたそんな状況に、混乱も理解も追いつかない。

 がく、と彼が崩れ落ちる。

『あれ? 心臓は外しちゃったか、残念。……なんて、そんなつまらない殺し方しないけどね』

 その向こう側に見えた一人の男子高校生が笑った。

 他にもう一人の男子生徒を連れているのが見える。

 後者は明らかに生きている人間の顔色ではない。

 彼は糸の切れた人形のように、その場に倒れ込む。

 至の身体から剣のような樹枝が引き抜かれた。

 同時に傷から大量の血があふれる。彼自身も血を吐き、地面に膝をついた。

『いや……っ!!』

 小春は狼狽し悲鳴を上げる。

 何事かを正確に把握出来たわけではなかった。

 それでも、窮地に陥っているのは分かる。

『逃げて……』

 弱々しい呼吸を繰り返す至が言った。

 小春は咄嗟にアリスの姿を捜す。

 周囲には見当たらなかった。先ほどまで廃屋内にいたはずなのに。

 そのときだった。小春が大雅からテレパシーを受けたのは────。

 その後、小春は蔦で拘束され、アリスの裏切りが露呈した。

 そして、結果的に至が命を落とした。
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