ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜

 瑠奈は河川敷に下りると、橋の下で立ち止まった。

 周囲に人気(ひとけ)はないが、ここならさらに人目を忍ぶことが出来る。

「聞きたいことがあるんだけど」

 瑠奈は油断なくステッキを構えたまま、早速切り出した。

 恐怖と緊張で小春の心臓は早鐘を打つ。

「和泉くんへのあのメッセージって、どういうつもりで送ってたの?」

「……どういうって、心配で」

「そうじゃなくて」

 瑠奈は一歩詰めた。

「小春ちゃん、魔術師なの?」

 どくん、と強く拍動する。

 核心に迫る問いかけに、小春は咄嗟に反応出来なかった。

「ま、魔術師って何……?」

 反射的に聞き返し、誤魔化そうとした。

 冷静さを失った頭では、深く考えることは出来なかったが、口先が身を守ろうと勝手に言葉を紡ぐ。

「魔法とか、瑠奈が何言ってるか全然分かんないよ! さっきの、スマホが石になったのも……どういうことなの?」

 瑠奈は少しの間、小春の態度を吟味するように黙り込んだが、すぐにいつも通りの笑顔を浮かべた。

「……そっかぁ、知らないか。いや、もしかしたら和泉くんと魔術師同士で繋がってるのかなーって思っただけ。知らないなら良いの」

 見当違いな瑠奈の推測と、あっさり小春の言葉を信用した点から、小春は閃いた。

 瑠奈は屋上での蓮と小春の会話を聞いていない。

 それはこの状況において、唯一の救いだった。

 しかし、そう言われても、小春は警戒を緩めるわけにはいかなかった。

 どのみち小春の嘘がバレたら終わりだ。小春には何の魔法(ちから)もない。

 しかし、そう正直に主張したとて信じて貰えるはずがないし、自分が唯一の生き残りとなるためには、結局他の魔術師を殺さなければならない。

 魔法を奪えないとしても、見逃して貰えるとは思えない。

 このまま(しら)を切り通せば、この状況を切り抜けられるだろうか。

 そんなことを思った折、瑠奈は「でも」と一層笑みを深めた。

「小春ちゃんが違っても、蓮くんはどうかなぁ?」
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