ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
至は臆することなく、そう声を掛けた。
「その制服は……月ノ池か?」
「おぉ、正解。君たちは……皆バラバラみたいだね。魔術師同士のお仲間さんといったところかな」
適当な推測を口にした。
合っていようがいまいが、どちらでも構わない。
「仲間じゃない」
「えー、そうなの? 別に警戒しなくて良いよ。君らをどうこうしようってわけじゃないから。ここで見たことは他言しないし」
「……そうか、信用出来ないな。忘れて貰わない限り」
踏み出してきた律が、至の頭に触れようとした。
不意をつく行動だったが、それは至の方が得意だった。
「!」
瞬時に見極め、彼に手を伸ばした。その指先で額に触れる。
その瞬間、がくんと脱力した律は、その場に崩れ落ちて倒れた。
目を閉じて意識を失っている。
「な……っ!?」
うららは思わず口元を手で覆った。何が起きたのかまったく分からない。
さすがの冬真も動揺を顕に彼を凝視するが、当の本人は至って飄々としていた。
「あぁ、危ない。もしかして今、記憶消されそうになった? 恐ろしい魔法だな」
ふわぁ、とあくびをする。
眠気が急速に絡み付いてくる。
「何を、しましたの!? この一瞬で佐久間さんを殺めた……?」
「いやいや、死んではないよ。殺すと怒られちゃうし。彼はただ、眠ってるだけ。だから安心して」
威圧するように微笑んで答えた。
穏やかなのに、壁を画するような隙のなさがある。
冬真はその場に屈み、律の息を確認した。確かに生きている。
「何の魔法なんですの……?」
「さぁ? 何かな」
首を傾げて見せる。
易々と明かすわけがない。
「あ、誤解しないで欲しいのは……俺は別に君たちの敵じゃないってこと。今のは不可抗力っていうか、自分の身を守っただけだから」
彼らの懐疑的かつ強い警戒心の宿る視線を受け止める。
踵を返し、ひらひらと手を振った。
「じゃあね。起こせば目覚めるよ、今ならまだ」
至と小春は立ち去る振りをし、角を曲がって聞き耳を立てつつ動向を窺っていた。
冬真が死体越しに話しているのを見て驚く。
「傍から見るとすっごい気味悪いなぁ」
死体を操る魔法だろうか。
別に死体という縛りはなく、単に人を操れる魔法だろうか。
至たちはさらにそこで「大雅」という名と「取り引き」というワードを聞いた。
小春が作り出す光学迷彩の結界に至も入り込む。
二人して尾行すると、彼らは星ヶ丘高校へ入って行った。
何らかの取り引きは、ここで行われる模様だ。
「……そろそろ帰ろうか」
至は小春を振り返る。
何が行われるのかは気になるところだが、蓮や祈祷師とは無関係そうだった。
「でも、大丈夫かな……」
小春が何を気にかけているのかは容易に察せられる。
「ま、取り引きって言うくらいだし不穏な気配はするよね」
至は眉根を寄せた。
「それに、あの彼からは危険な香りがする。大雅とかいう子も無事じゃいられないかも」