ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
*



 大雅と律は合流した後、河川敷の高架下へ来ていた。

 ここはアリスにバレているため、仲間たちも来ないはずだ。

「どうなるんだろうな、瑚太郎は」

「……どう、と言っても、自分でヨルに打ち勝つしかないだろう」

 小春たちには伝えたが、やはりもう隠し通せはしない。

 ヨルが冬真の一味であることを明かすよう彼を説得し、具体的な方策を考えなければならない。

 あるいは自分たちがヨルを手懐けられたら、冬真たちを倒す糸口になるかもしれない。

 ただ、人格交代についてまだ掴めていないことが多過ぎる。

 日中にもヨルが現れたということは、瑚太郎の主人格が侵食されている可能性があった。

 まずは瑚太郎本人と話し、その辺りを整理したい。

「じゃ、呼ぶぞ」

 大雅が言うと、律は頷いた。

 瑚太郎とはテレパシーを繋げないため、メッセージで連絡し、彼をここへ呼び出した。



「……なぁ、どうする?」

 瑚太郎を待つ間、大雅はふと言った。

 彼や冬真、アリスのことだ。

 同じことを考えていたためか、律にも言わんとすることがすぐに分かった。

 至がいたなら話は早かった。

 限界があるとはいえ、傷つけることも殺すこともなく封じ込めた。

 ないものねだりなどしていても仕方がないが、現実的に殺さずしてどう対処すればいいのか。

 完璧な正解は見つからない。

 命ある限り再起を図り、とことん敵対してくるはずだ。

「俺は────」

 律はいつにも増して謹厳な面持ちで考えを打ち明けた。
 それを聞いた大雅は神妙に頷く。

「なら、冬真はお前に任せるぞ。俺は瑚太郎を引き受ける」

 こく、と律も了承する。

 大雅はポケットに両手を突っ込んだまま、珍しく物憂げに虚空を眺めた。

 ────予感がする。

(……もう俺たちは、抜け出せねぇ泥沼に浸かってる。逃げ道も、そんな選択肢もねぇ)

 やり遂げるか死ぬか、それだけだ。



「!」

 河川敷の階段を下りてくる人影を見つけた。

 瑚太郎────いや、ヨルだった。

 その後を悠然と歩く冬真の姿を認める。

 彼の声代わりとなっている男子生徒の遺体も連れていたが、アリスはいない。

 大雅たちは別段驚かなかった。

 終焉へ近づいているのはもう分かっている。

 冬真とて、この機会を逃すわけがない。

 瑚太郎がヨルに侵食されつつあることも含め、予想通りだ。

(悪ぃな、小春。もともと冬真に関する面倒事は俺たちが持ち込んだんだ。お前らを巻き込めねぇよ)

 仲間────だから(、、、)
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