ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
第4話 11月7日
翌朝、いつものように合流した蓮に、小春は事の顛末を話した。
────壁際まで追い詰められた小春は、絶望の淵で最悪を覚悟した。
瑠奈がステッキを翳す。
その瞬間、目の前から瑠奈が忽然と姿を消した。
唐突で、そして一瞬の出来事だった。
「……え?」
困惑に明け暮れながら辺りを見渡す。何処にも瑠奈の姿はない。
やっと動くようになった足を半ば引きずるようにして立ち上がり、小春は駆け出した。
得体の知れない恐怖が全身に絡み付いてくる。
これも、何者かの魔法なのだろうか。消えてしまうなんて恐ろし過ぎる。
小春は瑠奈からでなく、姿の見えない魔術師から逃げたのだった。
「確かに怖ぇ魔法だな。……けど“消える”って、どういうことなんだ?」
蓮は首を傾げる。
存在そのものが抹消されるのか、肉体が消滅するのか、いずれにせよ強力過ぎるほどの魔法だ。
「瑠奈も私たちと同じ魔術師なんだよね……? ステッキって何なの?」
「よく分かんねぇけど、発動にそういうのが必要な魔法があるとかじゃねぇか?」
瑠奈本人が消えてしまったため、真相は不明だ。
小春は眉を下げ、ぽつりと呟く。
「瑠奈、生きてるかな……」
蓮は何処までもお人好しな小春を一瞥した。
自分を害そうとした相手など何故案じられるのだろう。
友だちだったとはいえ、生きるために自分を裏切った相手なのに。
「生きてたら、また狙われることになる。小春が本当は魔術師だってバレるのも時間の問題だろうしな。他人の、それも敵の心配してる場合じゃねぇよ」
あえて厳しく蓮は言った。
情けをかけて馬鹿を見るのは、いつだって善意を持ち合わせた優しい人間なのだ。
小春は押し黙る。
ああして瑠奈に“刃”を向けられても尚、敵という呼び方には抵抗を感じた。
瑠奈だって、生きたいだけなのだろう。
こんなゲームに巻き込まれさえしなければ、手を汚す必要もなかったはずだ。
そんな小春の心情など露ほども知らない蓮は「とにかくさ」と話を切り替えた。
「瑠奈を消した魔術師、見つけたいとこだな。小春を助けてくれたってことだろ? もしかしたら、味方になってくれるかも」