ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
瑠奈のこともあり、蓮は警戒心を剥き出しにしながら、確かめるように琴音に問う。
「ええ、そうよ」
「どんな魔法を持ってるの……? “飛ばす”っていうのは────」
首肯した琴音に、小春が続けて尋ねると、琴音は「待って」と制止した。
「あまり遅くなるといけない。続きは昼休みと行きましょう。信用出来るもう一人の魔術師も紹介するわ」
先に戻るよう言われ、小春と蓮は校舎内に入った。
階段を下りつつ、瑠奈や琴音に思いを馳せる。
何だか思わぬ展開続きで、一気に事が進んだような気がする。
「まさか、助けてくれたのが瀬名さんだったとは……」
「割と友好的だったよな。他の魔術師も紹介してくれるってことは、あいつも協力し合える仲間を増やしたいって考えてんのかも」
小春たちが魔術師であると知った上での、瑠奈と琴音の態度の違いを考えてみる。
瑠奈はバトルロワイヤルのルールに則り、自分以外はすべて敵だと見なし、問答無用で襲いかかってきた。
一方の琴音からは、蓮の言う通り、敵意や戦意をあまり感じられなかった。
他の魔術師と共同戦線を張り、無用な戦いをなるべく避けたい意図があるのかもしれない。
いずれにせよ、何らかの強力な魔法を有する琴音が味方となってくれるのであれば、心強いことこの上ない。
「誰だろうね? もう一人の魔術師って」
「予測もつかねぇな。……ってことは、上手いこと隠して紛れ込んでる奴だ」
小春たちが教室に戻ってから、およそ五分後に琴音も戻ってきた。
小春は思わず琴音を見やったが、琴音は徹底して目を合わせなかった。
────昼休みになると、小春と蓮は屋上へ向かった。
念のため瑠奈の動向を確認したが、彼女は弁当片手に別のクラスの友人の元へ行っていた。
屋上へ出ると、程なくして琴音が現れる。各々寄り、地面に腰を下ろした。
「よし、そんじゃ聞かせて貰おうか。お前は何の魔術師だ?」
蓮はいつものように焼きそばパンを頬張りつつ、単刀直入に琴音に問うた。
「────瞬間移動」
琴音は端的に答え、右手を掲げる。
「自分自身は勿論、この右手で触れれば物体も瞬間的に移動させられる」