ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
「あと、移動先には制約があるわ。私が直接見たか、訪れた場所じゃないと無理」
それは“ゲームバランス”を考慮した運営側の妥当な措置と言えた。
その制約がなければ、極端な話、国内や世界各地の危険地帯へ敵を飛ばしてしまえば良いということになる。
「ふーん、なるほどな。それ込みでもやっぱ強ぇよ」
蓮の感想には小春も同意見である。
しかし────小春は琴音の左目を見た。
いつからかずっとつけている眼帯だが、もしや強力な魔法と引き換えに失ったのではないだろうか。
「……左目が気になる?」
琴音は微笑み、眼帯に触れた。
「あ、えと……ごめん。そんなつもりじゃ────」
「気を遣われても困るし、今のうちに話しておくわ」
普段と変わらない調子で言を紡ぐ琴音。
「私の左目はもともとほとんど見えてなかったんだけど、ガチャの代償になって完全に役目を終えたわ。眼球もなくなったから、あえて見せたりはしないけど」
何でもないことのように言い、サンドイッチを頬張る。
小春は相槌以上の、掛けられるような相応しい言葉を見つけられずにいた。
「……二人とも、変な顔しないでくれる? 私としてはラッキーだったと思ってるのよ。犠牲に出来るのは、むしろ左目以外にないんだから」
まったく気付かなかったが、蓮ともども“変な顔”をしていたようだ。
琴音は小さく笑みながら、二つ目のサンドイッチに手を伸ばしていた。
「なぁ。……昨日の話に戻るけど、何で小春からも隠れてたんだ?」
「当然でしょ、その場にいたら私が魔術師だってバレるじゃない。水無瀬さんが魔術師かどうか分からなかったし、下手に正体を明かすわけにはいかないわよ。人助けが趣味なわけじゃないしね」
琴音がそう答えたとき、ちょうど屋上のドアが開いた。
錆びた重々しい音に、小春と蓮は振り返る。