ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜

「お前……」

 蓮は瞠目した。

望月(もちづき)くん?」

 小春も驚き混じりにその名を呼ぶ。

 現れたのはクラスメートの望月(けい)だった。

 頭脳明晰で成績優秀。

 琴音同様に一人を好む慧だが、テストはいつも学年トップで、その存在感は大きなものだった。

「そう、彼も魔術師」

 琴音が言う。慧はボストンメガネの細いフレームを押し上げた。

「……勝手に明かさないでくれ」

「あら。隠し通す気ならそもそもここへは来ないでしょ」

 不満気な慧に、あっけらかんと琴音は返す。

 慧は息をつき、三人に歩み寄ると、少し離れた段の部分に腰を下ろした。

「さて、役者が揃ったことだし────私と望月から一つ提案させて貰うわ」

 琴音はそれぞれの顔を見やる。

「私たちで共同戦線を張らない?」

 小春と蓮は顔を見合わせた。共同戦線?

「同盟を結んで、四人で仲間を作るの」

「ソシャゲで言うギルドみたいなことか?」

「そういうこと」

 蓮の問いかけに琴音は首肯する。

「このゲームは、所謂バトロワではあるけど、チーミングは許容されてるみたい。人数がいた方が何かと有利に決まってるわ」

 普段それほど熱心にゲームをしない小春にとっては馴染みのない単語が頻出し、首を傾げてしまう。

 しかし、言いたいことは分かる。

 四人でチームを作って協力しよう、ということだ。

「確かにな」

 琴音の言葉に同調する蓮。

 味方がいる方が何かにつけて上手く事が運ぶだろう。生き残れる可能性も高くなる。

 最終的にどうなるにせよ、仲間がいればリスクも格段に下がる。

 不明点の多いこのゲームにおいて、情報も得られるかもしれない。

 蓮は窺うように小春を見やる。

「どうする? 小春」

「私は、皆がいいならそうしたいかな……。その方が心強いし」

「なら、俺も賛成」

 琴音は口元を綻ばせ、慧は数度頷いた。

「良かった、決まりね」

「じゃあ、能力の共有をしておこう。それが分からないんじゃどうしようもない」

 そう言った慧は立ち上がり、三人のいる地面へと座った。

 手を軽く掲げると、バチバチと音を立てながら、青白く細い光が走る。

「僕の能力は見ての通り。雷のような電気を操ることが出来る、というものだ」

 慧はすぐに魔法を解いた。

 立ち入り禁止の屋上には自分たちの他に誰もいないが、校舎内の何処から見られるか分からない。
< 37 / 338 >

この作品をシェア

pagetop