ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
「お前……」
蓮は瞠目した。
「望月くん?」
小春も驚き混じりにその名を呼ぶ。
現れたのはクラスメートの望月慧だった。
頭脳明晰で成績優秀。
琴音同様に一人を好む慧だが、テストはいつも学年トップで、その存在感は大きなものだった。
「そう、彼も魔術師」
琴音が言う。慧はボストンメガネの細いフレームを押し上げた。
「……勝手に明かさないでくれ」
「あら。隠し通す気ならそもそもここへは来ないでしょ」
不満気な慧に、あっけらかんと琴音は返す。
慧は息をつき、三人に歩み寄ると、少し離れた段の部分に腰を下ろした。
「さて、役者が揃ったことだし────私と望月から一つ提案させて貰うわ」
琴音はそれぞれの顔を見やる。
「私たちで共同戦線を張らない?」
小春と蓮は顔を見合わせた。共同戦線?
「同盟を結んで、四人で仲間を作るの」
「ソシャゲで言うギルドみたいなことか?」
「そういうこと」
蓮の問いかけに琴音は首肯する。
「このゲームは、所謂バトロワではあるけど、チーミングは許容されてるみたい。人数がいた方が何かと有利に決まってるわ」
普段それほど熱心にゲームをしない小春にとっては馴染みのない単語が頻出し、首を傾げてしまう。
しかし、言いたいことは分かる。
四人でチームを作って協力しよう、ということだ。
「確かにな」
琴音の言葉に同調する蓮。
味方がいる方が何かにつけて上手く事が運ぶだろう。生き残れる可能性も高くなる。
最終的にどうなるにせよ、仲間がいればリスクも格段に下がる。
不明点の多いこのゲームにおいて、情報も得られるかもしれない。
蓮は窺うように小春を見やる。
「どうする? 小春」
「私は、皆がいいならそうしたいかな……。その方が心強いし」
「なら、俺も賛成」
琴音は口元を綻ばせ、慧は数度頷いた。
「良かった、決まりね」
「じゃあ、能力の共有をしておこう。それが分からないんじゃどうしようもない」
そう言った慧は立ち上がり、三人のいる地面へと座った。
手を軽く掲げると、バチバチと音を立てながら、青白く細い光が走る。
「僕の能力は見ての通り。雷のような電気を操ることが出来る、というものだ」
慧はすぐに魔法を解いた。
立ち入り禁止の屋上には自分たちの他に誰もいないが、校舎内の何処から見られるか分からない。