ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
「あーもう! いいよ、そういう分かんねぇことは今考えなくて」
蓮は早々に話題を打ち切った。
不確定要素を並べ立て、考察するのは苦手だ。
結論が出ても結局推測の域を出ないため、丁寧に仮説を構築する意味を見出せない。
テーブルの上に慎重に並べられていくグラスをすべてひっくり返し、投げ出したくなる。
「起点を作ったのはお前と水無瀬だろ……」
「そうだけど、俺はそんな話がしたいんじゃねぇんだよ」
困惑する慧に蓮は言った。
「魔術師の話だけど、他クラスだけじゃない。他校にもいるんだって」
さすがに琴音も慧も驚きを顕にした。
あらかじめ軽く聞いていた小春も、それが如何に不自然な事実かを改めて認識する。
「どういうこと? なら、やっぱり“二年B組”に意味なんてないんじゃないの?」
皆殺しなどという脅し文句のもと、それを起爆剤に殺し合う様を運営側は鑑賞したいのかもしれない。
琴音の言うように、本当にクラスの指定に意味などないのなら、危機感を持たせるためだけに添えられた文言なのかもしれない。
実際、嫌でも他人事でなくなった。当事者にされた。
「……その他校の魔術師は、向井の知り合いか?」
「ああ、一個上だけど俺の親友だ」
「だったら、都合がいい。少なくともメッセージの謎は、その人に聞けば解けるだろ」
小春は、はっとした。確かにそうだ。
その魔術師に届いたメッセージに“二年B組”とあれば、はったりや脅迫、あるいは真実味を強めるためだけの要素ではない可能性が高くなる。
つまり、本当に小春たちのクラスが狙われているということだ。
そうでなければ────の話は、実際にメッセージを見てみなければ分からない。
「よし、じゃあ放課後に会いに行こうぜ。近ぇし」
「……その人も仲間になってくれるかな」
「ああ、もともと俺と協力してたしな。……皆さえ良ければ」
小春と蓮の言葉に琴音たちは頷いた。
「私は大歓迎よ。向井の親友なら瑠奈みたいなこともないだろうし」
「僕も構わない」
小春は少々意外に思った。
一匹狼を好む琴音と慧が進んで仲間を持とうとしている。
「決まりだな。連絡しとく」
「今日の今日で大丈夫なの?」
「大丈夫、あいつ暇してるし。入院って体で休んでるからさ」
案ずる小春に蓮は答えた。
「どういうこと?」
「会えば分かる」
琴音の問いかけに短く答える蓮。
そろそろ昼休みも終わる頃だった。
「じゃあ、放課後に」
先に琴音、慧がそれぞれ時間をずらして戻っていく。