ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
放課後、小春たちは、校門を出て角を曲がったところで待っていた琴音と慧と合流した。
蓮の先導で、彼の親友だという魔術師の家を目指す。
「共闘のこと軽く話したけど、ぜひって感じだったぜ」
「良かったわ」
蓮と琴音のやり取りを耳に、小春は周囲を見回す。
「ここ、星ヶ丘高校の近くだね」
「ああ、そこに通ってる」
星ヶ丘高校は名花高校の付近にある高校で、最寄りの地下鉄駅は隣同士である。
学校間は徒歩で十分もかからない。
そうこうしているうちに、蓮が立ち止まった。
「着いたのか?」
「……誰かいる」
慧が尋ねると、蓮が緊張を滲ませたような声色で返した。
視線の先には一軒家がある。三角屋根の洋風な造りだ。
表札に“佐伯”とあるのが、この位置からでも見える。
あの家が目的地なのだろうが、その門前に一人の女子生徒が立っていたのだった。
「誰……? うちの制服みたいだけど」
琴音が警戒を顕にする。
頭につけたリボンのカチューシャが特徴的だが、四人とも見覚えはなかった。
声を掛けるかどうか迷っているうちに、その女子生徒は突如として姿を消してしまった。
「え!?」
全員が瞠目し、息をのんだ。
ありえない。立ち去ったのではなく、明らかに消えた。
周囲を見渡すが、彼女の姿はない。
「魔術師だ」
慧が呟くように言う。戸惑いが見え隠れしている。
今の消え方はまるで、琴音の“瞬間移動”だった。
同じ魔法が存在するということなのだろうか。あるいは“透明化”などの類だろうか。
「魔術師ってことは……まさか────」
蓮は焦った。さっと血の気が引く。
もしや、今の魔術師にやられてしまっていたら……。
蓮はインターホンを鳴らした。何度も連打する。
「奏汰!」
応答を待つのがもどかしく、大声で叫んだ。
耐え切れず門の取っ手に手を掛けたとき、カチャリと玄関のドアが開かれた。
「もー、どうしたの? そんなに鳴らさなくても聞こえてるよ」
暢気な調子で首を傾げつつ、蓮の親友である奏汰が姿を現した。
蓮はその身に怪我がないことを確認し、ほっと安堵の息をつく。
「良かった……。マジで焦った」
「え?」
「……今、ここに魔術師がいて」
急速な不安と安心の波に飲まれ、気抜けしている蓮に代わり、小春が説明した。
それを受け、奏汰は目を見張る。
「とりあえず、皆入って。中で話そう」
奏汰に促され、四人は家に上がった。