ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
「陽斗くんの魔法について教えてくれない?」
小春は単刀直入に尋ねる。
「俺の魔法は“コピー魔法”。最大で五種類まで、他の奴の魔法をコピーしてストック出来る。俺が上書きするか死なない限りは、半永久的に保存されてる」
それで、奏汰の氷魔法が扱えていたのだ。
そして、陽斗自身は水魔法の使い手でもなかった。
「この手で触ることでコピー出来るんだぜ。あくまで魔法だけな。物体はコピー出来ない」
「奏汰にも触れたってことだよな。どうやって特定したんだよ?」
「ちょっと待て、カナタって誰?」
蓮が問うと、困惑気味に陽斗は聞き返した。
「俺は結構鼻が利くんだけど、確実に魔術師を見分けるのは無理。だからさ、怪しい奴には口実つけて触れてみて、コピー出来たらラッキーみたいな感じなんだ」
小春を魔術師だと見破ったのも、陽斗の嗅覚によるものだったのかもしれない。
実際、コピー魔法は便利だが、陽斗のような嗅覚などで魔術師を見分けられなければ、まったく役に立たない。
ストックがなければ、ほとんど無魔法同然なのだ。
「あと……仲間になったってことで、大事なこと話しとくな」
陽斗は胡座をかきつつ、真面目な顔で言を紡ぐ。
「“魔法は一人五個まで”ってルールがあるじゃん? 俺の魔法の特性上、このコピー魔法以外の魔法を保有することは出来ないんだ。代わりにストックに貯めることになる」
コピー魔法以外も保有出来てしまうと、最大で十個の魔法を操れることになる。
そう考えれば、妥当な制約と言えた。
「それと、コピー元よりも制限がかかる。例えば、攻撃系の魔法は威力が減少するとかな」
陽斗の魔法について詳細を聞くと、彼の行動にも納得がいった。
より良い魔法をコピーして手に入れるために好戦的で、だからこそ自身が魔術師であることを隠す気がなかったのだ。
また、コピー魔法の力と痛覚麻痺に慢心している節があったことも事実だろう。
現状、陽斗のストックは三つ埋まっているそうだ。
一つ目は奏汰の氷魔法、二つ目は衝撃波魔法で、これは持ち主が不明。
三つ目は水魔法で、四つ目と五つ目はスペース。
戦闘中に相手の魔法をコピー出来るよう、一枠はいつも空けているらしい。
話を聞き終えた慧は、謹厳な面持ちで陽斗に釘を刺す。
「……今後は、無闇に一人で突っ走るなよ」
「分かった。四つ目のスロットが埋まったら大人しくするよ」
陽斗はそう返したが、それではいつになるか分からない。
蓮は陽斗の前に屈み込むと、腕を差し出した。
「ほら、俺の魔法コピーしとけ」
陽斗は蓮と差し出された腕を見比べる。
「……え、いいの?」
「おう。役に立つかは分かんねぇけどな」
「やった、ありがと!」
無邪気に笑った陽斗を見て、小春はその拘束をほどいた。
陽斗は蓮の腕に触れ、火炎魔法をコピーする。
「……ちなみに、水魔法は誰のものか分かるか?」
「うん、むしろそれだけしか分かんないけど」
蓮が尋ねると、陽斗は首肯した。
火炎を扱う蓮の天敵とも言える魔術師だ。なるべくなら会わないようにしたい。
「早坂瑚太郎。星ヶ丘高の2年3組、俺と同じクラス」