ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
*
冷たい風の吹き付ける真夜中。
星ヶ丘高校の屋上で、如月冬真は深い藍色の空を見上げていた。
柵のない屋上の縁に悠々と腰を下ろし、生と死の境界を実感する。
カチャ、と不意にドアノブが回る音が聞こえたかと思うと、キィと鉄が軋み、屋上へ誰かが姿を現した。
「おかえり、ご苦労さま。収穫はどう?」
冬真の傍らに立っていた佐久間律が人影を出迎える。
声色とは打って変わって無表情だった。
微動だにしない律の目には何の色もなく、さながらマネキンのような不気味さがあった。
「あー、駄目だな。今日もお前の探す魔術師は見つかんなかった」
人影もとい桐生大雅は、気怠げにそう答える。
「そっか、残念……。やっぱり一筋縄ではいかないよね」
言ったのは律だが、それに合わせて表情が動いたのは冬真だった。
大雅は改めてその様を眺め、しみじみと呟く。
「……便利なもんだな、お前の“傀儡魔法”。代償で失った“声”も相殺じゃん」
「まぁね。でも、そうとも言い切れないよ。僕の魔法には声が必要不可欠だからね」
代償で声を出せなくなった冬真だが、魔法により誰かを“傀儡”にしてしまえば、声を借りて会話をすることが可能だった。
今も、傀儡にした律を介して話していた。つまり、律の発言は冬真の言葉なのだ。
「それで言えば、君こそいい魔法を引いたよね。唯一、魔術師を見分けられる……」
大雅にかかれば、一目見ただけで魔術師か否かを判別出来る。
無論それだけでは、相手の保有する魔法は分からないが、大雅はそこまで特定する術を持ち合わせていた。
「お陰で僕も助かってるよ」
冬真は自身より強力な魔法を有する魔術師を探していた。
具体的には、時間操作や空間操作といった魔法を操る魔術師だ。
冬真の魔法も強力だが、やはりそれらの前では限界が生じる。
本領を発揮するには、有利な環境を作り出さなければならない。
そして、そのために、また別の“とある魔法”を有する魔術師を捜していた。
彼または彼女が見つかれば、冬真は限りなく最強に近づく……。
「何処にいるのかな。硬直魔法の持ち主は────」
冬真の唇が弧を描く。冷え切った風が髪を揺らす。
「……とりあえず、続けるか? 地道な魔術師探し」
「そうだね、大雅に頼り切りになるけど」
「別にいいよ、大した負担でもねぇし。一年は網羅したから、次は二年だな」
大雅は両手をポケットに突っ込み、ぶっきらぼうに言う。
月明かりに反射し、左耳のピアスが光った。
────大雅たちは魔術師を特定し、その魔法を割り出すことで、魔術師のリストを作っていた。
少なくともこの作業は、冬真の目的の魔術師が見つかるまでは続くのだろう。
当面は手っ取り早い星ヶ丘高校生を中心に捜しつつ、他でも見かけ次第特定していく形だ。
冷たい風の吹き付ける真夜中。
星ヶ丘高校の屋上で、如月冬真は深い藍色の空を見上げていた。
柵のない屋上の縁に悠々と腰を下ろし、生と死の境界を実感する。
カチャ、と不意にドアノブが回る音が聞こえたかと思うと、キィと鉄が軋み、屋上へ誰かが姿を現した。
「おかえり、ご苦労さま。収穫はどう?」
冬真の傍らに立っていた佐久間律が人影を出迎える。
声色とは打って変わって無表情だった。
微動だにしない律の目には何の色もなく、さながらマネキンのような不気味さがあった。
「あー、駄目だな。今日もお前の探す魔術師は見つかんなかった」
人影もとい桐生大雅は、気怠げにそう答える。
「そっか、残念……。やっぱり一筋縄ではいかないよね」
言ったのは律だが、それに合わせて表情が動いたのは冬真だった。
大雅は改めてその様を眺め、しみじみと呟く。
「……便利なもんだな、お前の“傀儡魔法”。代償で失った“声”も相殺じゃん」
「まぁね。でも、そうとも言い切れないよ。僕の魔法には声が必要不可欠だからね」
代償で声を出せなくなった冬真だが、魔法により誰かを“傀儡”にしてしまえば、声を借りて会話をすることが可能だった。
今も、傀儡にした律を介して話していた。つまり、律の発言は冬真の言葉なのだ。
「それで言えば、君こそいい魔法を引いたよね。唯一、魔術師を見分けられる……」
大雅にかかれば、一目見ただけで魔術師か否かを判別出来る。
無論それだけでは、相手の保有する魔法は分からないが、大雅はそこまで特定する術を持ち合わせていた。
「お陰で僕も助かってるよ」
冬真は自身より強力な魔法を有する魔術師を探していた。
具体的には、時間操作や空間操作といった魔法を操る魔術師だ。
冬真の魔法も強力だが、やはりそれらの前では限界が生じる。
本領を発揮するには、有利な環境を作り出さなければならない。
そして、そのために、また別の“とある魔法”を有する魔術師を捜していた。
彼または彼女が見つかれば、冬真は限りなく最強に近づく……。
「何処にいるのかな。硬直魔法の持ち主は────」
冬真の唇が弧を描く。冷え切った風が髪を揺らす。
「……とりあえず、続けるか? 地道な魔術師探し」
「そうだね、大雅に頼り切りになるけど」
「別にいいよ、大した負担でもねぇし。一年は網羅したから、次は二年だな」
大雅は両手をポケットに突っ込み、ぶっきらぼうに言う。
月明かりに反射し、左耳のピアスが光った。
────大雅たちは魔術師を特定し、その魔法を割り出すことで、魔術師のリストを作っていた。
少なくともこの作業は、冬真の目的の魔術師が見つかるまでは続くのだろう。
当面は手っ取り早い星ヶ丘高校生を中心に捜しつつ、他でも見かけ次第特定していく形だ。