ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
*



 放課後、いつものように鞄にステッキを忍ばせた瑠奈は、指定された店へと急いだ。

 周囲の雑音も雑踏も霞むほど緊張していた。

 もしかしたら、今日殺されるかもしれない……。そんな恐怖と不安がついて回る。

 店内へ入ると、一番奥のテーブル席に昨晩の男子を見つけた。

 他に二人の姿があり、そのうちの一人は別の高校の制服を身につけている。

 瑠奈は鞄の持ち手を強く握り直し、彼らに歩み寄った。

「来たよ、言われた通り……」

「よぉ、早かったな。ま、座れよ」

 不安気な瑠奈とは打って変わって、大雅は暢気なものだった。

 空いていた自身の隣を指しつつ言われ、瑠奈はおずおずと腰を下ろす。

 目の前に座る男子が、にっこりと柔和な微笑を湛えた。

「やぁ、胡桃沢瑠奈ちゃん。君のことはだいたい把握してる。素性や魔法についてね」

 恐らく彼が話しているだろうに、声は隣の別の男子から発せられていた。

 ちぐはぐな状況に瑠奈が戸惑っていると、大雅がポテトをつまみながら説明を始める。

「先に俺らの自己紹介からしとくな。俺は桐生大雅、星ヶ丘の一年。で、こいつは三年の如月冬真。こっちは緑葉学園の二年、佐久間律」

 学校や学年もバラバラの三人だが、その共通点は言われずとも分かった。全員、魔術師だ。

 大雅が何処かふてぶてしいのは、魔術師故の傲慢ではなく、元からの性格だろう。

 不良っぽいし、敬語など使ったことがない、といった雰囲気だ。

「……それで、あたしに何の用なの?」

「単刀直入に言えば、お前には俺たちの協力者になって欲しい」

 瑠奈はさらに警戒した。

 見ず知らずの自分に、何故そんなことを頼むのだろう。

 捨て駒にされるのではないだろうか。

 今さら逃げ出すことも出来ず、瑠奈は黙って大雅を見返した。

「具体的には諜報的なことをして欲しいんだ。あとは必要なとき、戦闘要員として手助けしてくれ」

 意外にも大雅は、頭の悪い乱暴者というわけではなさそうだった。

 生意気な年下ではあるが、下手にあしらうことが出来ないような威厳も感じられる。

「ちょっと待って、その前に皆の魔法についても教えてよ。あたしのはもう知ってるんでしょ? これじゃ不公平だよ」

「……そうだな」

 大雅は頷き、ポテトに手を伸ばす。

 協力関係を結ぶなら、いずれは手の内を明かさなければならない。

 別に不都合は生じないだろう。

「俺は“テレパシー魔法”だ」

 凜然と大雅は告げた。

 相手と沈黙状態で三秒間目を合わせることにより、テレパシー能力を発動出来る。

 魔術師かどうかの見分けは、その人の持つ波動のようなものが可視化されるために可能だった。
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