ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
それだけでは保有する魔法までは分からないものの、その相手と目を合わせれば読み取ることが出来るのだ。
また、大雅が一度でも三秒間目を合わせ、魔法を使用した相手なら、それ以降はいつでもテレパシーのやり取りが可能となる。
「トランシーバーみたいなイメージな。顳顬に触れてる間は、俺からも相手からも話せる。聞くだけなら触れる必要はねぇ」
大雅は実際に顳顬に触れながら言った。
瑠奈の頭の中に直接声が響いてくる。
「凄い……」
「これはいつでも切断出来る。俺からは無理だけどな。……ま、他にも色々出来ることはあるけど今はまだいいだろ」
大雅が顳顬から人差し指を離すと、声は目の前から耳に届いた。
これもまた、かなり便利かつ強力な魔法だと瑠奈は思う。
「あと、注意点だ。読心は無理。つまり相手の心の中を読むことは出来ねぇ」
「そうなの?」
「思考の転送は出来るぞ。でも、その場合は相手にも送る意思がねぇと駄目なんだ。俺が一方的に心を読むのは無理だ」
だとしても、充分過ぎるほどの性能だ。
そもそも“三秒間黙って目を合わせる”という発動条件が、簡便で容易な点が強い。
ただ、昨晩そうして大雅に色々読み取られた際、瑠奈は特に思考を送る意思など持ち合わせていなかった。
ということは、読み取れるのは思考だけではないのかもしれない。
あるいは大雅が嘘をついているのかもしれない。
「……冬真くんの魔法は?」
瑠奈は正面に向き直った。冬真は相変わらず穏やかな表情だ。
「僕は“傀儡魔法”だよ。対象に十秒間触れると、相手を操ることが出来るんだ」
触れることで相手の意識に介入し、操り人形の如く操作することが可能だった。
瑠奈は律を見やる。彼は今操られているのだ。
また、冬真の魔法は死者を操ることも可能であった。
ただし、死者は生きている人間に比べて意識の入口が狭いため、せいぜい「歩く」、「話す」程度で限界だ。
「あくまで身体を借りてるだけだから、その人の思考までは読めない。それと、同時に操ることが出来るのは一人までだよ」
律を介し、冬真は言う。
瑠奈はその微笑みに怯んでしまいそうだった。
一見、人畜無害で優しそうだからこそ、能力とのギャップに驚きを禁じ得ない。
「それと……物理的に身体を乗っ取る以外にも、僕は人を操れるんだ」
「え? どうやって?」
「方法は言わない。けど、それを使うと誰でも十二時間は僕に絶対服従するようになる。こっちの場合は、操作に上限人数もない」
それこそが傀儡魔法の真骨頂であり、最も恐ろしいものだった。
どちらの能力も術者が対象者の眉間に触れれば解除出来るが、それ以外には自力でも他力でも解除不可能だ。
術をかけられた側はたとえ気を失っても解除されない。
死亡すれば、実質的に解除と同義ではある。しかし────。
「死んだ人も操れるんだよね……?」
「そうだよ」
例えば、傀儡から逃れるために死を選んだとしても、結局は死してなお操り人形になるだけだ。