ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
「……大丈夫なの? 大雅くん」
小春には現状、大雅の身の安全が一番案じられた。
命を狙われていると分かっている相手と、ともにいるつもりなのだろうか。
「ヘーキ。そんな急に取って食われたりしねぇよ、たぶんだけど」
いっそのこと、この際きっぱり冬真たちとの繋がりを断ち、堂々と小春たちの仲間になると宣言した方が安全な気がする。
しかし、大雅にそのつもりはなかった。
表面上は冬真たちの一味の一員として振る舞いつつ、実際には小春たちの仲間という状態である。
「ま、俺の裏切りはそのうちバレる。でもしばらくはやり過ごせるはずだ。瑠奈は俺が一方的にやられたと思って、冬真にそう報告してるだろーから」
いずれにせよ、冬真には大雅の能力が必要だ。
裏切りを悟ったら、殺すにしろ生かすにしろ大雅のことを取り返そうと躍起になるだろう。
その際、小春たちの仲間だと露呈してしまうと、関係のない仲間たちのことまで危険に晒してしまう。
彼ら彼女らを盾にすることになる。
だからこそ大雅はスパイ的な立ち位置でいることにしたのだった。
危険なのは自身だけで充分だ。それ以外は巻き込めない。
「……ただ、先に謝っとく」
大雅は苦い表情で言った。
「バレたときに最悪なのは、強引な奪還ってパターン。俺を奪い返すなり“絶対服従の術”を永遠にかけ続ける……的な。そうなったら、たぶんお前らに迷惑かける」
冬真の命令は、小春たちに害をなすものばかりだろう。
「絶対服従は基本的に、術者本人にしか解けねぇ。術者以外なら、俺のテレパシー魔法で上書きすれば解けるけど、俺が自分に……ってのは無理」
冬真の“絶対服従の術”に対しては、実は大雅のテレパシー魔法が唯一の対抗手段だった。
とはいえ、それは大雅以外の人物にかけられたときの話である。
大雅が黙っていたことにより、その術に対抗可能な手段が存在することを冬真は知らない。
しかし、それを“幸い”の一言では流せない。大雅がかけられては結局意味がないからだ。
「つまり、俺がかけられたら……死ぬより地獄かもな」