ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
*
陽斗は夜道を歩きつつ、スマホを眺めた。
以前作っておいたグループのトーク画面を開き、会話を追う。
小春や蓮から、新たにアリスと大雅の二人と行動をともにすることになった旨が記されたメッセージが届いていた。
テレパシー魔法を有する大雅とは近々直接会ってテレパシーを繋げておいた方がいい、とのことだ。
(同じ学校だし、明日にでもクラスを覗いてみるか)
陽斗はそんなことを考えながら“了解!”と返そうとしたが、はたと動きを止める。
不意に防衛本能が危険信号を送った。陽斗は振り返る。
その瞬間、銃弾のようなものが飛んできて、陽斗の頬を掠めた。
「おわっ」
頬に熱が走り、直後に痛みが訪れる。
持ち前の反射神経で避けたから良かったものの、そうでなければこの程度の傷では済まなかっただろう。
「あっぶね……! お前何だ、誰だよ! 魔術師だな? 俺とやろうってのか?」
少し先に立つ人影に向かって吠えた。
フードを目深に被った怪しい人物だが、体格的に恐らく男だ。
しかし、何で攻撃されたのだろう。魔法なのに物理攻撃?
「ほら、かかって来いよ! 俺は逃げも隠れもしないから」
陽斗は蓮からコピーした火炎魔法を繰り出し、手に炎を宿した。
取り囲むように相手に向かって放つ。
しかし、即座に消されてしまった。彼の繰り出した“水魔法”によって。
「お前……まさか、瑚太郎?」
陽斗は確かに瑚太郎から水魔法をコピーした。
だが、瑚太郎は臆病で気弱な性格ゆえに、積極的に魔術師を襲撃するようなことはしていなかったはずだ。
また、友だちである陽斗に問答無用で襲いかかるなど、にわかには信じられない。
「あ? てめぇもそう呼ぶのか」
彼は低い声で苛立たしげに言った。
瑚太郎じゃない……? しかし、水魔法の持ち主は瑚太郎しかいない。
彼の意味不明な呟きに戸惑う陽斗に、強烈な水柱が伸びてくる。
咄嗟に避けきれず、術をまともに食らった陽斗は地面を転がった。
何とか着地すると、手の甲で血を拭う。
「くそ……。やっぱオリジナルには敵わないか」
陽斗が小春たちに同じ術を使ったときとは威力が段違いである。
だが、どのみち逃げられはしない。
彼は自分を殺すつもりでいる。陽斗に残された選択肢は、戦うか死ぬかだ。
荒い呼吸を繰り返し、陽斗は何とか氷魔法での応戦を試みた。
しかし、それを繰り出す前に彼が水を放った。
「やっ……ば」
あれには見覚えがある。
空気中でも形を保ち、まるで意思を持っているかのように動く水の塊。
陽斗が小春に使ったのと同じ技だ。
慌てて立ち上がった陽斗は、地面を蹴って走り出した。
何度も角を曲がり、水の追撃から逃れようとしたが、先に陽斗の身体が限界を迎えた。
その前の攻撃で既に弱っており、否応なしに走る速度が落ちる。
水は陽斗に追いつくと、飲み込むようにまとわりついた。
(苦しい……、誰か!)
呼吸を整える間もなく、水中に閉じ込められた。
思わず息を吸うが、当然余計に苦しみが増すだけだ。
すぐそこに空気が、酸素があるのに、水を引き剥がせない。掴むことが出来ない。
「……っ」
陽斗はしばらくそうしてもがいていたが、やがて力尽き、その場に倒れた。
「死んだか?」
動かなくなった陽斗を見下ろし、彼は誰にともなく尋ねる。
その唇が満足気な弧を描いた。
ばしゃ、と陽斗を飲み込んでいた水が弾け、地面に滴り落ちる。
彼は踵を返すと、夜の闇の中へ溶けていった。
陽斗は夜道を歩きつつ、スマホを眺めた。
以前作っておいたグループのトーク画面を開き、会話を追う。
小春や蓮から、新たにアリスと大雅の二人と行動をともにすることになった旨が記されたメッセージが届いていた。
テレパシー魔法を有する大雅とは近々直接会ってテレパシーを繋げておいた方がいい、とのことだ。
(同じ学校だし、明日にでもクラスを覗いてみるか)
陽斗はそんなことを考えながら“了解!”と返そうとしたが、はたと動きを止める。
不意に防衛本能が危険信号を送った。陽斗は振り返る。
その瞬間、銃弾のようなものが飛んできて、陽斗の頬を掠めた。
「おわっ」
頬に熱が走り、直後に痛みが訪れる。
持ち前の反射神経で避けたから良かったものの、そうでなければこの程度の傷では済まなかっただろう。
「あっぶね……! お前何だ、誰だよ! 魔術師だな? 俺とやろうってのか?」
少し先に立つ人影に向かって吠えた。
フードを目深に被った怪しい人物だが、体格的に恐らく男だ。
しかし、何で攻撃されたのだろう。魔法なのに物理攻撃?
「ほら、かかって来いよ! 俺は逃げも隠れもしないから」
陽斗は蓮からコピーした火炎魔法を繰り出し、手に炎を宿した。
取り囲むように相手に向かって放つ。
しかし、即座に消されてしまった。彼の繰り出した“水魔法”によって。
「お前……まさか、瑚太郎?」
陽斗は確かに瑚太郎から水魔法をコピーした。
だが、瑚太郎は臆病で気弱な性格ゆえに、積極的に魔術師を襲撃するようなことはしていなかったはずだ。
また、友だちである陽斗に問答無用で襲いかかるなど、にわかには信じられない。
「あ? てめぇもそう呼ぶのか」
彼は低い声で苛立たしげに言った。
瑚太郎じゃない……? しかし、水魔法の持ち主は瑚太郎しかいない。
彼の意味不明な呟きに戸惑う陽斗に、強烈な水柱が伸びてくる。
咄嗟に避けきれず、術をまともに食らった陽斗は地面を転がった。
何とか着地すると、手の甲で血を拭う。
「くそ……。やっぱオリジナルには敵わないか」
陽斗が小春たちに同じ術を使ったときとは威力が段違いである。
だが、どのみち逃げられはしない。
彼は自分を殺すつもりでいる。陽斗に残された選択肢は、戦うか死ぬかだ。
荒い呼吸を繰り返し、陽斗は何とか氷魔法での応戦を試みた。
しかし、それを繰り出す前に彼が水を放った。
「やっ……ば」
あれには見覚えがある。
空気中でも形を保ち、まるで意思を持っているかのように動く水の塊。
陽斗が小春に使ったのと同じ技だ。
慌てて立ち上がった陽斗は、地面を蹴って走り出した。
何度も角を曲がり、水の追撃から逃れようとしたが、先に陽斗の身体が限界を迎えた。
その前の攻撃で既に弱っており、否応なしに走る速度が落ちる。
水は陽斗に追いつくと、飲み込むようにまとわりついた。
(苦しい……、誰か!)
呼吸を整える間もなく、水中に閉じ込められた。
思わず息を吸うが、当然余計に苦しみが増すだけだ。
すぐそこに空気が、酸素があるのに、水を引き剥がせない。掴むことが出来ない。
「……っ」
陽斗はしばらくそうしてもがいていたが、やがて力尽き、その場に倒れた。
「死んだか?」
動かなくなった陽斗を見下ろし、彼は誰にともなく尋ねる。
その唇が満足気な弧を描いた。
ばしゃ、と陽斗を飲み込んでいた水が弾け、地面に滴り落ちる。
彼は踵を返すと、夜の闇の中へ溶けていった。