ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
説明している大雅自身も、それがどういうことなのか、何故なのかが分からず困惑しているのが分かる。
『前に一回会ったときにテレパシー繋げたけど、夜が明けたらもう切断されて連絡が取れなくなってた。こんな奴、他に見たことねぇよ』
どうやら大雅がヨルと会ったのは、その一度きりのようだった。
────ヨルは陽斗以上の戦闘狂で、夜な夜な魔術師を殺して回っていると冬真から聞いている。
ただし、その目的は魔法の奪取ではなく、単純な“殺し”。
その上、性格は粗暴で短気、気まぐれで自分勝手。
冬真も手を焼いているとのことだが、現状は戦闘要員として役立つため生かしているようだ。
『……たぶん冬真たちは、そいつの素性も魔法も知ってると思う』
いつも真っ先に、大雅にそれを調べさせるくせに、ヨルのことは“分からない”で通ってきているのだから。
把握しているからこそ生かしているのだろう。
『瑚太郎だけじゃなく、ヨルにも警戒してくれ』
「ああ、分かった」
「……ねぇ、とりあえず早坂瑚太郎に接触してみるのはどう?」
琴音は大雅とこの場にいる面々に提案した。
「ヨルのことは分かりようがないけど、早坂のことなら探れるんじゃない?」
「確かに、会おうと思えば……」
奏汰が言った。
陽斗から瑚太郎の素性は聞いているため、会うことも難しくはないだろう。
「そうしたいけど、どうやって? もう放課後だし帰っちゃってるかも」
「簡単だろ」
小春が案ずると、慧は毅然と断言する。
陽斗の荷物の中からスマホを取り出すと、人差し指を拝借し、勝手にロックを解除してしまった。
「おいおいおい……」
「これで早坂を呼び出す。その反応も見たいしな」
蓮の抗議に構わず、慧はメッセージアプリから瑚太郎に連絡を取る。
すぐに瑚太郎から反応が返ってきた。慧は画面を掲げる。
【なぁ、今から会えるか?】
【あれ? 陽斗、意識戻ったの? 大丈夫?】
【うん、もう平気だ。それについて話があってさ】
【了解、病室教えて。今から向かう】
陽斗を模した口調のメッセージに、瑚太郎は一切不信感を抱いていないようだ。
入院については恐らく担任から聞いていたのだろう。
「余裕そうだな。トドメでも刺しに来るつもりか?」
陽斗の無事と意識回復にさほど驚いていないように見える。
誘ったのはこちらだが、病室に乗り込んで今度こそ息の根を止めるつもりかもしれない。
「心配ない。多勢に無勢だ」
慧は言いながら、瑚太郎に病室を教えた。
彼が一人で勢い込んで来ても、こちらには五人もいる。いざというときは問題ないはずだ。