ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
『……探るのはいいけど、安易に信用すんなよ。俺が見るまでは』
おもむろに大雅が言った。
例えば瑚太郎が欺こうと嘘をついても、大雅にだけは通用しない。言わば保険だ。
「ああ、分かってる。頼むぞ」
『おう。近いうちにな』
本当であれば大雅もこの場へ来たいところだが、冬真たちの目もあり、大雅は迂闊に動くことが出来なかった。
そうこうしているうちに、病室の扉が控えめにノックされた。
瑚太郎が来た。誰もが察し、険しい表情を浮かべる。
「入っていいぞ」
あっけらかんと蓮は言った。
戸惑うように少し間が空いてから、扉がスライドされる。
一人の男子高校生が姿を見せた。
「あれ……? えと」
瑚太郎がぱちぱちと瞬きを繰り返し、この場にいる面々を見やった。
そして目を閉じたままの陽斗に気が付き、困惑したように眉を寄せる。
「君たちは誰? 僕、陽斗から連絡貰ったんだけど……。意識、戻ったはずじゃ────」
「白を切るつもりかしら。彼をこんなふうにしたのは、紛れもなくあなたじゃない」
琴音は腕を組んで瑚太郎に厳しい視線を注いだ。
それぞれが似たような表情を湛えたが、当の瑚太郎は心底困り果てたような顔をしていた。
「ちょっと待って。どういうこと? 陽斗は事故って聞いてるけど違うの? 僕が何かしたって……?」
狼狽える瑚太郎の様子に、小春は思わず蓮と視線を交わした。
思っていたのとはかなり印象が違う。
瑚太郎は見るからに気弱で臆病そうに見えるが、本当に陽斗を襲った魔術師なのだろうか。
生き永らえた陽斗にトドメを刺しに来たようには、さすがに見えない。
「路上で溺れた。……お前の水魔法によってな」
慧は高圧的に言った。瑚太郎の瞳が揺れる。
「僕の魔法……」
“魔法”という非現実的なワードに驚いたわけではなさそうだ。
魔術師であることを隠す気はないらしい。尤も、陽斗から聞いている以上、誤魔化しようはないのだが。
瑚太郎は困惑したような表情を浮かべた。
「僕が陽斗を襲うはずないよ」
「あら、結果が物語ってるじゃない」
「でも違う、僕じゃない!」
かぶりを振って訴える。
真剣な眼差しで各々を捉えた。
「……よく分からないけど、君たちも魔術師なの?」
「そうだ、陽斗の仲間だぞ。だからこそ、こいつをこんな目に遭わせた犯人に怒ってんだ」
「本当に瑚太郎くんの仕業じゃないの……?」
蓮に小春が続いた。
瑚太郎は小春の言葉に強く頷く。
「うん、僕じゃない。信じて」
吟味するように瑚太郎の目を見据えたり、顔を見合わせたりと、どう捉えるべきかそれぞれが思い悩んだ。
瑚太郎が真実を口にしているとしたら、どういうことなのだろう?
陽斗が水魔法に倒れたのではない、とは考えにくい。同じ魔法が同時に存在することがありうるのだろうか。