ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜

「とにかく、早坂の処遇についてはあいつと会わせてから決める。それでいいか?」

 慧はあえて大雅の名を伏せた。

 瑚太郎が“黒”なのであれば、同じ学校ということもあり、大雅を特定し次第襲撃に向かうかもしれない。

「そうね、賛成よ」

 琴音は頷いた。他の面々からも反論は出ない。

 だが、小春の心には再び靄が広がっていた。

 結果的に瑚太郎が嘘をついていたとして、陽斗を襲ったのも彼だと判明したら、その際はどうするつもりなのだろう。

 以前、気絶した陽斗を「殺せ」と言った慧の冷酷さを思い出す。

 同じ選択をするつもりかもしれない。

(それで、いいのかな……?)

 明らかに正常な判断力を失っているようにしか思えない。ゲームという前提がなければの話だが。

 俯いた瑚太郎の憂うような表情が、小春には強く気にかかった。



*



 夜が更け、影のような灰色の雲が月を半分覆い隠す。

 星ヶ丘高校の屋上で、大雅の無事を知った瑠奈は、深く安堵の息をつきながら目に涙を滲ませた。

「よかった……、死んじゃったかと思った。何処に瞬間移動させられたの? 大丈夫?」

「ああ、どっかの路地裏。マップアプリ使って帰って来た」

 淡々と嘘をつくが、瑠奈は無論、冬真や律にも疑う素振りはない。

「でもひどいよ、二人とも。大雅くんの無事を知ってたなら教えてくれてもいいじゃん。あたしのせいかもってずっと怖かったのに……」

 冬真は苦笑した。傀儡の律が言葉を紡ぐ。

「ごめんごめん。僕とは一緒の学校だからいち早く知れただけだし、別に隠してるつもりもなかったよ」

 大雅は目を細め、冬真を見据えた。……嘘だ。

 瑠奈から連絡を受けた冬真はすぐさまテレパシーで大雅の無事を確認していたし、瑠奈にその事実を伝えなかったのもわざとだ。

 結局のところ冬真は、根本の部分では瑠奈を信用していない。

 彼女が琴音と共謀し、大雅を潰そうとした線も追っていたのだろう。

 それだけ疑い深い冬真であれば、実際には大雅のことも何かしら勘づいているかもしれない。

「だけど不覚だったなぁ。用があるのはお仲間の方なのに、瀬名琴音に邪魔されるとはね……」

 冬真は律の声を借り呟く。

「邪魔だなぁ。……やっぱり殺すしかないか、先に」

 その言葉に大雅の表情が険しくなった。

 そうすることは分かっていたが、じわじわと忍び寄ってくる差し迫った緊迫感の気配を、改めて感じ取る。
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