ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
その一文以外はB級ゲームとしてままありそうだが、そこだけ妙に不穏な気配を孕んでいる。演出の一部だろうか。
しかし、興味は抱いてもプレイには踏み切れず、小春は画面を閉じようとした。
「あれ……?」
戻るアイコンをタップしても反応しない。
ホーム画面にも戻れなければ、何故か電源を切ることも出来ない。
画面は奇妙なメッセージを表示し続けた。だんだんと恐怖心が膨らんでいく。
ウィルスにでも感染したか、乗っ取られてしまったのではないか。さっと青くなる。
次の瞬間、画面が暗転した。
小春は当惑したまま、不自然な挙動を繰り返すスマホを見つめることしか出来ない。
程なくして、勝手に再起動されたスマホは正常に戻った。
「良かった……、びっくりした」
安堵の息をつき、ロックを解除する。
しかし、ほっとしたのも束の間だった。
ホーム画面に羅列するアプリの中に、見慣れないアイコンが増えていた。
黒地に白い五芒星。名称は“ウィザードゲーム”。
小春の表情が強張る。
強制的にアプリがインストールされたとでも言うのだろうか。
慌ててアイコンを長押しし、アンインストールを試みた。
しかし、削除を意味するバツ印が出ない。
設定アプリを開いたが、何故か削除ボタンが選択不可となっており、アンインストールは出来なかった。
アプリストア内では、そもそもこのアプリが見つからなかった。
「何なの……?」
怖いような薄気味悪いような情動に駆られる。明らかに異常な状況に陥っている。
もう見なかったことにしてしまいたかったが、意思と感情は時に連動しないもので、指先はアイコンに触れていた。
アプリ自体はかなりシンプルで、BGMもなければ効果音もなかった。
最下部に小さく何か書いてある────“トーク画面及び本アプリの画面を他者と共有した場合、ペナルティが与えられます”。
「…………」
魔法をコンセプトにしているからか、ページ全体が三日月や星などで煌びやかに装飾されている。
だが、ゲームと言うには粗末な作りだ。
画面は一つしかなく、下部にスロットのようなものがあった。
五個の空洞があり、何かを保存出来るようだ。セーブデータ用だろうか。
そのスロットの上、画面の大部分を占めているのはガチャとやらだった。
「魔法ガチャ……?」
凝ったフォントで“魔法ガチャ”と書いてある。
その文字の下には説明も記載されている。小春は文字を目で追った。
【毎日23時59分に回せるよ!
・必要消費アイテム
①四肢 ②臓器 ③その他身体部位 ④???
好きな番号を選んでね〜!
何が出るかはお楽しみ。
そして、何を失うかも…】