ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
「全員ばらばらにするのは、いちいち琴音ちゃんに魔法を使わせるためだとして……何で小春ちゃんを操って移動させたの?」
瑠奈は訝しげに首を傾げた。
大雅がテレパシーを使ったり、小春を操るにしても蓮のように電話をかけさせる程度で良かったのではないだろうか。
わざわざ魔法を使わせ、大雅が死にかける必要があったのだろうか。
「あいつは最初から仲間だから、俺が呼びかけるより信用されるだろ。何より、小春が動けば蓮も動かせる。あと、直接出向かなきゃ動いてくれなさそうな奴もいるしな」
慧なんかが特にそうだ。
大雅を信用しているのかどうかも定かではなく、小春が直接急かしたお陰で移動させることが出来たと思っている。
魔法で半ば強引に連れ出したわけだが。とはいえ────。
「テレパシーを使わねぇ一番の理由は……琴音には、俺の魔法は今使えねぇ状態だと思わせときたいんだ」
「何で?」
「“自分で動くしかねぇんだ”って思わせるため」
なるほど、と瑠奈にも理解出来た。
これから大雅は、あえてばらばらにした琴音の仲間たちを、琴音自身に魔法で迎えに行かせようとしている。
だが、大雅のテレパシーがあれば、わざわざ琴音が出向く必要がなくなってしまう。
だからこそ、大雅の魔法は使えないのだと思わせておかなければならないのだ。
大雅と瑠奈は琴音の家へ向かった。
門前に琴音の姿があることに気付き、瑠奈は慌てて陰に隠れる。
先ほどの大雅のテレパシーから、ただならぬ事態だと察したのだろう。
「どうなったの? ……随分疲れてるみたいだけど、何があったの?」
「やべぇことになった。今、俺も律も瑠奈も冬真に絶対服従させられてる。もうテレパシーも実質無効化状態で、明日の昼までは使えねぇ」
澱みなく答える大雅に、瞠目した琴音は眉を寄せた。
「じゃあ、さっきの連絡の後────」
「ああ、実は冬真の襲撃から逃げて来たとこだ。……けど、逃げ切れねぇだろーな」
大雅は淡々と嘘をついたが、琴音の瞳は充分揺らいだ。
「悪ぃ、もうあれこれ話してる時間はねぇ。冬真は律や瑠奈を、小春たちの元に送ってた。“逃げろ”ってギリギリ伝えたから……たぶんどっかに散ってるはずだ。俺のテレパシーは使えねぇから、お前が行って安全な場所に瞬間移動させてやってくれねぇか?」
大雅は警戒するように周囲を見回しつつ琴音に言った。
「合流させた方がいいの? このままばらばらにいるのとどっちがいいのか……」
冬真は琴音やその仲間の顔までは知らない。
散っていれば、もし見つかったとしても全員がまとめて彼の駒にされることはないだろう。
「一緒にいた方がいいと思うぞ。多勢に無勢だろ」
「それもそうね……。分かったわ」
散り散りにした張本人とは思えない台詞だった。
瑠奈は大雅の演技力と機転に圧倒されながら、大人しく状況を見守り続ける。
「でも、逃げたって何処に?」
「分かんねぇけど……学校とか河川敷とか、お前が思いつく限り、知る限りの場所に行って、あいつらを捜してくれ。全員揃ったらお前は離れろ」
「そうね、私がいたら皆が危険に晒される」
「それもあるけど、あいつらが冬真に操られたら、全員お前に牙剥くぞ」