ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
その様を想像した琴音は怯んだ。
純粋な敵より、その方が余程精神的に来るものがある。
大雅の意図としては、単に琴音が仲間たちと固まられると手出し出来ないために離れて欲しいに過ぎなかったが、琴音はそんなことを知る由もない。
「だから離れろ。いいな」
「……ええ、分かった。皆のことは高架下に集めるわ。そしたら私は一人で学校に行く」
その高架下は、琴音が新たな拠点として見つけ出した場所だった。今はアリスがいる。
「おう。念のため言っとくけど、通話はすんなよ」
「どうして?」
「テレパシーで感知出来るから。俺は今、自由が効かねぇんだ。冬真に尋ねられたら、お前らの通話の内容を喋らされる」
つまり、その気になれば盗聴のようなことが出来てしまうということだろう。
テレパシー魔法の際限は何処にあるのだろう、と琴音は思わざるを得なかった。
それほどまでに強いのなら、冬真の執着にも頷ける気がする。
「了解よ」
逐一移動して捜すしかなさそうだ。
琴音は大雅に「気を付けて」と言い残すと姿を消した。何処かへ瞬間移動したのだ。
大雅の言葉を全面的に信用してくれた────陰から出た瑠奈は、大雅のもとへ歩み寄る。
「思い通り……。琴音ちゃんは何度も瞬間移動を繰り返すしかないね。身体がもつかなぁ」
それこそが狙いなのだが、この短時間でその目的を達成するための仕込みを終え、起爆剤を作り上げた大雅には恐れ入ってしまう。
まったくもって頭の悪い不良などではなかった。
これなら本当に琴音の魔法を封じられるかもしれない。
無力な琴音なら、瑠奈にも殺せる。
「やることは分かってるよな」
「うん、大丈夫」
全員を瞬間移動させた琴音が学校で一人になったとき、瑠奈が殺す。
疲弊と反動でまともに動くことも出来ない琴音など、何の脅威でもない。
「なら、もう行ってろ。琴音が戻ってくるのを待ち伏せるんだ」
「分かった!」
うきうきと跳ねるような足取りで、ステッキを片手に駆けて行く瑠奈を見送る。
大雅は抜け切らない疲労感を覚え、再び塀にもたれかかると、小さく息をついた。
*
まず琴音が移動した先は名花高校だった。
教室を覗くと、暗闇に浮かび上がる液晶画面の明かりが見える。
「……向井?」
「ん? 琴音か」
がたん、と音を立て、座っていた机から下りた蓮は、琴音に歩み寄った。
「お前も小春に言われて来たのか?」
「? 何の話?」
眉根を寄せ、琴音は聞き返す。
「大雅の裏切りがバレて、全員が冬真に狙われてるって話」
「……それを水無瀬さんが?」
「ああ、大雅から聞いて急いで来たって感じだった。だから俺と手分けして皆をばらばらに逃がしたんだ」