死亡エンドを回避していたら、狂愛キャラが究極のスパダリになってしまいました!?


「ねえ、サリー。どう思う?」
「どう……と言いますと」
「シルヴァ――あ、小公爵様のこと。私としては穏便に婚約解消の意思をチラつかせたつもりだったのだけど」

 はあ、とため息をついて言えば、サリーは明らかに「その話題自分に振るんですか」と困った顔をしていた。

 それもそうよね。メイドの立場からすると、こんな答えにくい話題はない。

 しかし、残念ながら私には、悩みを相談できるほどに親しい仲の友人がいなかった。

 悲しいかな。小説の中のエリザは、典型的な嫌味たっぷりの高慢な人物像だったので、取り巻きはいても友達はいないのだ。

(だから相談するとなると身近にいる使用人しかいないんだけど。事故を起こす前はメイドとこうして話すこともあまりしなかったし、ここ数日は私の態度の変化に驚かれてばかりなのよね……)

 それも全部、事故の後遺症による性格の変化だと納得させているけれど。やっぱりまだ屋敷の使用人たちの態度はよそよそしい限りだった。

(……そういえば、お父様が手配したというこの護衛騎士……妙に綺麗な顔をしているけど)

 私は密かに思いながら、さりげなく振り向く。
 カフェテラスの席に座る私の背後を、見守るようにして立っている青年。

 名前はたしか、ルイ。
 私と同じか、少し歳上ぐらいに見える彼は、中性的な顔立ちで独特な雰囲気があった。

(小説のエリザの身の回りって、あまり語られていなかった気がするけれど。こんな騎士がそばにいたのね)

 正直、本当にモブかと突っ込みたくなるくらいには顔面偏差値が高い。
 小説は主要キャラありきなところがあったし、モブにスポットが当たることは少なかったけど、こんな人もいたんだと妙に気になってしまう。

「なにか御用でしょうか、お嬢様」

 私の視線に気づいていたルイは、無の表情を一切変えることなく尋ねてきた。

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